第40回にごたん

プリキュアロス症候群の彼氏を1分で立ち直らせる方法

【魔法のステッキ】

【節分】

<幻>




「はぁ……」

「どうしたの、そんな溜息ついちゃってさぁ」

「今日、何日……?」


完全に死んだ目で彼が聞いてくる。


「2月4日ね」

「何曜日……?」

「土曜日に決まってるじゃない」

「ああ……! あああ……! ああああ……!!」


突如立ち上がって絶叫する彼を見て、私は大いに不安になった。


「終わっちゃったぁ……終わっちゃったよぉ……」


昨日も全く同じ様子だったが、もう少し軽症だった気もする。

なにぶん毎週日曜日に見ていた某魔法少女アニメ(彼曰く、「魔法少女とは別物」らしいが、その違いは私には分からない)が最終回を迎え、「まほプリロス症候群」なるものに陥っているらしい。

所謂「燃え尽き症候群」だった。


「それくらい毎年のことじゃない」

「それはそうなんだけどさ……本当に最高傑作だったんだよ……」


今度は部屋の隅で体育座りになり、ウォークマンを取り出しイヤホンをつけた。


「後期エンディングは神がかかってたなぁ……りえりーとほっちゃんとはやみんの歌が聞けた幸せよ……」


昨日は節分だったので恵方巻を食べようと言ったが、このありさまで今朝もまだ食べていない。


「とりあえず、片付かないから食べちゃってよ」


片耳だけイヤホンを外させ、どうにか席に座らせる。


「あ、いちごメロンパン……」


今の彼の目にはねぎとろがいちごメロンパンに見えるらしい。

こりゃ末期かしらね、と覚悟を決めた私は、、ハート形のチャームがついたおもちゃの杖を取り出す。


「キュアップ・ラパパ!壮太よ、笑顔になりなさい!」

「……」


一切反応を返さなかったが、まあいい。

杖をしまうと、彼の両脇に手を差し込む。


「おりゃおりゃおりゃ~!!」

「あはははははははは!!」


無理矢理笑わせる。


「ねっ、笑ったでしょう?」

「えっ……」

「笑顔だよ、笑顔」

「そうだよね……笑顔って、大事だよね……」


おお、テンションが上に向いたらしい。


「ありがとう」


そう言って、恵方巻にかぶりつく。


ポケットの中のものを見ながら、ありがとう、とつぶやいた。


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