第457話首都に到着です!

「グレットー、大丈夫ー?」


シガルが御者台に乗り出して車を引くグレットに声をかけると、グレットは楽しそうにガフッと応える。

これなんて呼べばいいんだろう。虎車?

そういえばエバスは翻訳したら何になるんだ・・・って俺の認識しだいだから虎になるだけか。


あ、御者はイナイです。殆ど操作してないけど。

だってグレットくん、分岐のある所以外は街道沿いにお願いねってシガルが言ったら、言う通り勝手に走ってくれるんすもん。


因みに車は最初の街で買った中古です。

買った後イナイとアロネスさんがちょこっとだけ改造してるけど。

簡易な中古車なのでサスは付いて無いけども、改造のおかげで速く走ってても揺れがマシです。

中にクッションも敷き詰められているので、結構快適。


それから移動はこの車になっております。あと少しで首都でっす。

グレット君、毎日殆ど休憩しないで自動車に近い速度で走ってんだよなぁ。

前に走らせた時も思ったけど、こいつ体力凄いな。

普通この手の生き物って、瞬発力が有る代わりに体力がない傾向が多いよね?


「こいつ、初日から全然疲れる気配ないな。そう見られない図体といい、ほんと特殊個体だな」

「アロネス、解剖すんなよ?」

「嬢ちゃんが飼ってるのにんな事しねーよ。後が怖いし」


後半はぼそっと言ったけど、多分イナイが怖いんだろうな。因みにそんな事したら俺も怒るよ?

しかし、色々知ってるアロネスさんからしてもグレットは特殊なんだな。

あ、そうだ折角だし、アロネスさんなら知ってそうな事この機会に聞いておこう。


「アロネスさん」

「どした?」

「グレットって野菜も美味そうに食べるんですけど、エバスって実は雑食だったりとかします?」

「・・・知らねえで飼ってたの?」


アロネスが少し驚いた顔で俺と見た後、他の全員を見る。

イナイさんもキョトンとしておられる。


「肉食の獣だって、肉ばっか食ってるわけじゃねえぞ。それに草食の獣も肉を食うことは有る」

「あ、そうなんですか」

「肉食の獣の場合は体内の調整の為に草を食む。けど食うからって野菜から栄養を取る様な器官にはなっちゃいないみたいだから、野菜ばっか食ってたら死ぬけどな。

草食の場合は基本、草食ってりゃ体がそれを栄養に変えれる様になってるからどうにかなるけど、肉類から栄養が取れないわけじゃ無い。とはいえ適した器官じゃないから、やっぱ草食ってるほうが良いんだけどな。肉食った結果体壊すのも居るし」


ああ、あれか、単に猫草的な物か。

基本は動物性たんぱく質だけど、腸内の調整のために草食ってる感じか。

そいえば昔、免疫つける為に死んだ同属の肉を食う草食動物の映像も見たような気が・・・。


「後はあれだな、飼い主が美味そうに食ってたりすると、美味いんだと思って食うのもいる」


あ、なんかそっちの可能性の方が高い気がする。

結構グレットの目の前で野菜食べてるからな。

俺達が美味しそうに食べてるから、美味しいんだと思って食べたら意外に口に合ったとか、そんな感じかもしれない。

その後も試しにあげたら、喜んで食ってるし。


「お、道が開けてきたな。てこたぁそろそろ街が見えて来るな」


イナイの声に、みんなが正面を向く。

ここまでの道もそれなりに整備はされていたのだけど、ここからはしっかりと広く整備されている様だ。


「あー、着いちまうなー」

「遠くに見えるあれがそうなのかな」

『何だか、案外小さいな』

「んー、どれどれ・・・確かにそんなに大きく無いな」


肉眼では良く解らないので、視力を強化して見ると、ハクの言う通り首都にしては小さい気がする。

とはいえ一日そこらで見て回れるような小さい街ではないけど。

ウムルがデカすぎてマヒしてるのかもしれないな、うん。


そのまま何事もなく街まで走り、街の門前で並んでいる人の列に並ばずに門番さんの一人にイナイが話をしに行った。

門番さんらしい角の生えたトカゲみたいな人にイナイが身分証を出すと、どうやら話が通っていたらしく案内をしてくれるらしいとの事だ。

しかし、あの人の種族が気になるな。確実にリザードマンでは無いだろうけど。


きびきびとした様子で歩く彼・・・彼だよね?

彼について行くと大きなお屋敷に案内され、グレット君はいつも通りの流れとなり、屋敷の使用人さんらしい女性ににこやかに迎え入れらた。

この女性はギーナさんと同じ種族だ。でもギーナさんよりしっぽがちょっと小さいな。


「珍しいですか?」


女性は俺の視線に気が付き、尻尾を手に取りながら聞いて来た。

しまった、じろじろ見すぎたかな。


「え、あ、すみませんじろじろ見て」


慌てて謝ると、女性はクスッと笑って。


「いえ、そんなに気にしないで下さい。嫌悪の目じゃ無ければ気にしませんよ」


と、にこやかに言ってくれた。良かった。

因みに尻尾を持ち上げた時彼女がスカートな為、色っぽい太ももに一瞬目が行ってしまったのは内緒である。

例え両隣から若干の殺気を感じるとしても内緒である。


女性の話を聞くにここはギーナさんの屋敷らしく、アロネスさんはここに宿泊する予定だったらしい。

それを聞いたアロネスさんは、話すべきことが終わったら自分で宿をとると言っていた。

まあ、こればっかりはな・・・。


それとどうやらギーナさんは、今日中に会うことは出来ないらしい。

というか、来ないアロネスさんをもうほおっておいて、出来る事を先にやっているそうだ。

連絡はさっき出したので、明日には帰って来るとの事です。


「俺来なくてよかったんじゃないかな」

「お前が来ねーからこうするしか無かっただけだろうが!」


それを聞いたアロネスさんはそんな事を言ったために、暫くイナイに説教を食らっていました。

なんかこっちに助け求めてるけど、こればっかりは庇わないですよ?

絶対色んな人に迷惑かけてるの、間違いないし。


しっかしこの屋敷、大きいは大きいけど、そんなに大きくない。

ちょっと大きなお家、って感じだ。

一国の主の家にしては小さいというか、質素な様な気がする。

今まで見てきた物が豪華すぎたのかな。


でもこの家、樹海の家より小さいんだよな。

いや、これもあの家がデカいだけか。


まあ、そんなこんなで今日はお屋敷で一泊になります。

明日からはどこかの宿だと思うけどね。

なんだかんだクロトも怖がりそうだし、そのほうが良いかなとは思ってる。


さて、まだ明るいし街散策にでも行こうかな。

イナイに聞いてOKなら、皆で散策に行ってみようかね。

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