第424話仕事を受けるか相談です!

「探索ねぇ・・・」


ブルベさんから提示された条件を思い返すと、受けない理由が無いレベルだったと思う。

あれを受けるって事は、定期的な仕事となるわけだし、報酬も有る。

色んな所に行くらしいから、きっと見た事ない景色も見れるかもしれない。

それに移動先での行動は、ある程度の成果は求められるだろうけど、多少の自由がきく。勿論同行者がいた場合は別だろうけど。


難点は行き先指定が出来ないという事ぐらいじゃ無いだろうか。

どっちみち、どこ行ったら面白いのかなんてのは結局聞かないと解らない身としては、それはそれで楽しいのではないかとは思う。

うーん、考えれば考える程「うん」と言わせるために提示されたように感じる。

他の人も似たような条件でやってるのかなぁ。


「シガルはさっきの話、どう思う?」

「受けた方が良いかって事?それとも内容自体?」

「両方かなぁ」

「んー、そうだなぁ」


俺の問いに、頬に人差し指を当てながら、可愛く首を傾げて考えるシガル。

そしてその隣で何故か同じように首を傾げるクロト。

仲いいね君ら。



「内容自体は好待遇・・・に見えてちょっとだけ落とし穴が有ると思ったかな」

「落とし穴?」

「うん。まあ多分相手がタロウさんだから、っていうのが有るんだと思うけど、向かう先の危険度を完全に無視してると思うの。だって、行くときの面子は私達だけ、でしょ?

ただそれは、タロウさんが危険に会う事を気にしていないっていうより、タロウさんが危険となるような事柄はそうそう無いと思ってる感じかなぁ」


天井に目を向けながら、自分の考えを告げるシガル。危険度の無視か。

俺が向かうってなると、イナイも一緒にって話になるだろうから、そうなると殆どの危険なんて有って無いような物になるか。

湿地帯やら、砂漠やら、人の居ない地で立ち往生してしまうっていう可能性は少ないだろう。危険な生き物に負けるって可能性も少ない。

でも、そうなるとシガルたちの危険もあんまり考えてないって事になっちゃうのかな?

それは困るなぁ。

まあ、お前が守れってイナイに言われるんだと思うけど。いや守るけどね。


「あたし達に関しても、陛下はかなり高い評価を下されてると思うの。だから行く先は未踏の土地に行く可能性も高いかなとは思う。

勿論毎回じゃ無いと思うけどね。後は現地の協力者のお守りとか有りえると思うな」


未踏地なぁ。それはそれで楽しそうなんだよなぁ。

ただまあ、まだほかの国にそこまで言った事が無いのと、人族以外が多い国にもあまり行って無いから、どこ行っても新鮮なんだけども。


「でもそれを含めても、私は受ける利点の方が大きいかなと思う」

「あ、そこは俺と一緒なのか」

「タロウさんもそう思ってたの?」

「うん、だってどう考えても、俺に首を縦に振らせる気にしか思えない条件だったし」

「多分それは間違いないと思う。内容も・・・もちろん受けるならもうちょっと細かい話になると思うけど、基本的には『タロウさんにとっては』良い事しか無かったもの」


やっぱりそうだよなぁ。

好待遇過ぎて、普通なら何か裏でも有るんじゃないかって疑うレベルだ。

いや、言われた事が都合が良すぎて、かな。

ただ言ってきた相手が相手だし、酷いことは考えて無いと思う。勿論国王様だし、国の損に繋がる事はしないとも思うけど。


そういえばさっきの会話からだと、イナイには受ける受けないの相談はしない方が良いのかもしれない。

決まったらイナイに伝えてほしいと言われたってことは、自分で決めてイナイに伝えろって事な気がする。

多分、話自体は既にイナイに通ってるのだとは思うけど。


「クロトとハクはどうしたい?」

「・・・僕はお父さんとお母さん達がいるならそれで良い」

『私はシガルについて行くだけだぞ?』


うん、この二人は特に悩む必要も無しと。

多分シガルも聞いたら、タロウさんが決めた事で良いよっていう気がする。

なんだかんだ、この面子の行動決定権って、基本的に俺に委ねられているんだよな。

有りがたいが偶に困る。


ただ今回の事に関しては、受けた方が良いとは、既に思ってる。

国に仕えるってなると、色々としがらみが有るだろうし、動きにくいと思っていた。

けど今回の話はそこまで拘束される話ではないようだし、かなり自由が有る。

そもそも、基本的には俺達だけで行動して良いって言われたような物だ。


それに、最近は流石に少し、自分の立場っていう物に思う事が有る。

あんまり目立ちたくはなかったけど、俺はここ最近でかなり目立ってしまった。

である以上フリーよりも、一応どこかに所属している方が面倒が無い気がする。

それがウムルなら尚の事だろう。


その辺り少し悩んでいたんだよなぁ。このまま外に出て、どこかの国からの勧誘とか来たら面倒だなと。

ウムルの仕事で動いているとなれば、未踏の地で出会った人以外は、そうそう変な事はしてこないだろう。

そう思うからこそ、ブルベさんの提案に少し疑問を覚えたんだけど。

あんまりに俺に都合が良すぎる。


「俺は受けようと思ってるんだけど、どうかな?」


俺の結論をシガルに告げる。もちろんシガルが嫌だというなら、受けるつもりは無い。

これは俺だけの話じゃないからな。


「うん、良いと思う」


シガルは満面の笑みで俺に応える。シガルも受けたかったのかな。

いや、普通に考えれば当然か。シガルは国民で、王宮魔術師目指してて、王様直々に話をされた。

受けない方がおかしいか、普通は。

そうだな、そう考えると、シガルの今後の為にも受ける方が良いのか。


「じゃあ、近いうちにイナイに伝えるとして・・・出発前に用意をしなきゃな」

「何か要る物が有るの?」

「あのローブと同じもの、最低もう一つ作っとこうと思って。イナイは外装が有るけど、シガルの為にね」


ハクはそんなもの要らないだろうし、クロトはあの黒を纏った方が頑丈な可能性が有る。

となると、シガルには有った方が良いだろう。

あれが有れば、よほどの攻撃以外は防げるはずだし。


「あー、えっと、嬉しいけど、普段からは使わないからね?」

「それは俺も一緒だよ。あれに頼ると多分駄目になる」


リンさんの攻撃すら防げるローブ。全身をすっぽり覆って、顔以外は食らう所は無くなる防具。

そんな物いつも使っていたら、きっと体捌きを考えなくなる。

それじゃきっと、ミルカさんには絶対勝てない。

それにおそらく、あのローブにただ頼る防御はあの人には通用しない。


「後他にもやる事有るからねー」

「騎士隊長さんとの約束とか?」

「・・・あれ、約束になるのかな。一方的に言われた気がするんだけど」

「向こうは約束だと思ってると思うなぁ」


マジかー。今度こそ、本当に本気のあの人とやるのか。

あの人リンさん達以外で、心の底から怖いと思った人の一人なんだけどなぁ。

今度は剣を握るって言ってたし、大分怖い。

前回の魔術戦の一件も考えると、この手の誘いは本気で気を引き締めていかないと殺されかねない。


「行った方が良いかなぁ・・・」

「多分期待はしてると思うよ」

「そっかぁ・・・」


気が重いけど、ここ離れる前に一度行くかぁ。

やだなぁ、怖いなぁ。

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