デイライフ

ゆめみじ18

DL.00.01.0003 開幕1分の死闘 

 これを読んだあなた、どうか私を助けて下さい。

 DL.??.??.????


 人は過去には戻れない、神でさえも。

 DL.00.02.0001


 頑張れよ、最初の俺よ。

 DL.01.01.0001



 世界線 航は考える。

 この物語をどこから最初に始めるかにあたり。クライマックス前後を説明するのはあまり得策とは言えない、何故ならより混乱するからだ。

 しかし俺が生まれた時を話しても戻りすぎだしまるで意味がない、じゃあ俺の日常からか? それではあまりに平凡すぎる。

 俺の悲しい過去から始まってもテンション下がるだけだし面白くない。そこで俺はこう物語を始める事にする。


 前略、俺は異世界召喚された。



 DL.00.01.0001


 何かの記憶を削除したような、バイトのクビを宣告されたあとのような。心にぽっかり穴が開いたようなそんな空虚な感情を抱きながら、少年は真っ暗に飛んだ意識が覚醒するかのように再起動する。

 魔法陣の上に立ち、眩い光に包まれていた少年は。次第にその光の中から姿を表す。光は次第に弱くなり。まるで知的な人間が住まう、人が30人は入りそうな学校の一クラス分が入りそうな空間の中に少年は召喚された。

 少年の目の前には少年を召喚したと思われる少女がまるで魔女か賢者とも思われる見てくれでほくそ笑む。「やったぜ実験は成功だ!」っと言わんばかりの笑みだった。

 しかし『今』の状況が極めて危険で急がねばならないということはこの賢者にしかわかっていない。

 視線を周りに移すと大きな時計が目に飛び込んだ。時刻は0時00分、部屋の中なので夜なのか昼なのかわからない。窓が無いのだ。普通はどの部屋にも窓はあるからここは地下室か何かなのか?っと可能性を巡らせる余地はある。

 まだ何も知らない少年はポカンと口を開けて、不敵な笑みを浮かべる少女の全身を確認するかのように下から上へ視線を移した。

 大きな帽子、少女から観て右側が眼帯、お約束の絶対領域、賢者っぽいローブ、ふりふりスカート、かなり高名そうな造形がやたら複雑そうな杖。

 賢者少女の全身を観て顔を観た時に無意識にの内に少女の目は黄色から赤色に変わり、そのしてその赤色の目の状態で少女は第一声を発する。

 赤ん坊の産声だったら祝福すべきものなのだろうが、不穏な剣幕を持ち眉を八の字にして本気の怒号でこう言う。

「この愚か者めが!」

「?」

「…?」

 何のことだかさっぱりわからない少年だが、赤色の目が元の黄色に戻った少女も何の事だかさっぱりわからないようなきょとんとした目でこちらを観ていた。過程や工程を省いて結果だけを観たことさえ、この二人には理解することは出来ない。

「えっと…今…」

 その言葉を切るかのように、はしょりたいかのように賢者少女は。

「こ…こほん! そ…そんなことより今急いでるんだ、改めて質問するぞ」

 すると、賢者少女はすぅっと一呼吸おいてから持っていたメモ帳を手に取り。まるでテストの答え合わせをするかのように質問する。

「さて…私は初めてだけど、一応聞いておく。あなたは今何週目?」

「?………??」

 謎が謎を呼ぶ展開だがそんなものは彼女と言葉のキャッチボールをしなければ始まらない。とりあえず少年はよくあるテンプレートな答えをする事に徹した。

「何の話だ…? えっとここは何処でお前は誰だ…?」

 瞬間彼女は固まる、間が凍ったかのような静寂の後うなだれたように賢者少女は気力を無くす。

「あーマジかよまだ一週目なわけ? めんどくせー」

 すると、ドンドンドンとドアを叩く慌ただしい音が聞こえる。ドアは堅く閉められていて入らせる気が更々無いことがドアの前に置いている大きな家具類で見て取れる。

「大賢者クレープ!大人しく出てこい!オイ!」

「逃げられると思うなよ!家は完全に包囲されている!」

「降参するなら生かしてやる!10!9!8!」

 少年航は「今」置かれている状況を空気や肌で感じ取った。

「お…おいこれって…!」

「まあ、まずアレだ、まず[この状況]に慣れろ。そして一番大事なことを言う」

「6!5!」

 大賢者クレープは少年航に指を指してこう言う。

「お前は召喚された瞬間に一つ魔法が使えるようになった」

「3!2!」

「名はデイライフ!それを唱えるとその日の0時00分に時間を巻き戻る事が出来る!」

「0!」

 ドンっとドアをぶち壊す爆発音が聞こえた、煙の中から拳銃を持った兵隊達がわらわらと入ってきて大賢者クレープに銃口を向ける。クレープは少年航を守るように両手を横にする。

「…!」

「さあお前!さっさと叫べ!私に構わず飛べ!」

「撃て!」

 瞬間、銃声。複数人によるまるでガトリングガンのような容赦のない銃撃はか弱そうな少女の肉体をズタズタに打ち抜き、貫通させ。少年航の右腕に当たり爆発四散した。右手が無くなった少年には強烈な激痛が走りその悲鳴混じりにその呪文を叫ぶ。

「ぐぁああああああああ! で…デイライフ!!」

 ゴーン、っと鈍い除夜の鐘でも鳴ったかのような効果音が聞こえると世界は制止した。まるで0と1の狭間の世界にいるような制止世界で固有結界のような時計と歯車の世界に自分と少女と兵隊と弾丸が止まった空間が出現した。その観るも豪華な時計が出現し、針を動かしそれが徐々に高速回転する。ゴゴゴゴと地震の揺れのような地鳴り音が最大級まで轟いた後、テレビの電源を切ったようなブツンッ・・・っというな音と一本線を観た後はあたりは真っ暗闇になり。瞬間静寂が訪れ、航の意識は暗闇へと飲まれた。


 再び目を見開いたあと、まず最初に飛び込んだのは賢者少女の「やったぜ実験は成功だ!」っと言わんばかりの笑みだった。

 次にあたりを見渡す、時計は0時00分。右手に視線を移したら右手が[あった」。

「…あ…、ある」

 一滴の冷や汗をかいた状態でまじまじと手を見つめた後、彼女は第一声を発する。

 すると、賢者少女はすぅっと一呼吸おいてから持っていたメモ帳を手に取り。まるでテストの答え合わせをするかのように質問する。

「さて…私は初めてだけど、一応聞いておく。あなたは今何週目?」

「?………??」

 それを聞いた後、少年は疑問に感じる。自分が最初に聞いたのは「この愚か者めが!」だったはず。こと記憶力に関しては少年は学年クラス1位の実力を持っていた。聞き違うはずがない。

「名はデイライフ!それを唱えるとその日の0時00分に時間を巻き戻る事が出来る!」

 頭の中でフラッシュバックするその言葉は正確に記憶していた。

「なのに、無い…。その言葉が…何故だ?」

「あん…?」

 夢だった可能性もある、これは何かの夢だった。場面がいきなり変わってまた違う場面へ、なんてことは夢なら良くある話だ。だが、それを確かめる時間は無いことをすでに少年は記憶している。

 『今』の状況が極めて危険で急がねばならないということはこの賢者にしかわかっていない。っと賢者が思っていることが航にはわかる。

 時間にして1分、1分でここに謎の兵隊が突撃してきて彼女を殺す。

「まあ、まずアレだ、まず[この状況]に慣れろ。」

 記憶がフラッシュバックしてしばし沈黙、賢者少女が返答はまだかまだかと貧乏ゆすりをしていると…。

「に…2週目だ…」

 瞬間彼女は固まる、間が凍ったかのような静寂の後うなだれたように賢者少女は気力を無くす。

「あーマジかよまだ2週目なわけ? めんどくせー」

 今度は逆に同じ仕草と行動だったのでほっと安堵した。そして理解した。

「そうか…、この力…ループしてるのか…」

「そういうこと、んで? 何を聞きたい? どこまで聞いた?」

 どうやら彼女には記憶がないらしい、いや。記憶がある航自身のほうがおかしいと理解した。

 そこへ、ドアからドンドンドンと言う音が聞こえてきた。

 聞きたいことは山ほどある。ここはどこで、彼女は一応大賢者クレープということは聞こえたが本人から聞いてない、あの敵兵は何か、そのメモ帳は、あの赤い目は、などなどあるが聞ける時間が1分じゃどうしようもない。まずは生命線であるデイライフのことについて聞いておこう。

 少年が「デ…」っと口ずさもうとすると彼女の目が赤く変わった。

 そして大賢者クレープは手で止まれのポーズを取り。

「それを言うとまた飛ぶぞ」

「!?」

 自分が質問しようと思ったら先に答えが帰ってきた。驚くのもつかの間少女は赤い目のまま。過程や工程を省いて結論のみを言う。

「能力は「一日限定ループ」自分が死んだら戻れないぞ」

「な…!?」

「この目は『果ての答えを出す者(オメガアンサー)』生まれた時から持ってる。頭の回転が速すぎて過程や工程を省いて結果の答えのみ無意識にイメージできる。どうしてその結果にたどり着くかは自分でもわからない」

「あ…!」

「あの敵は魔王軍が私を殺す為に送った刺客だ」

「メ…!」

「召喚した時に何を言うか書いたメモ帳、内容は教えない」

「ク…!」

「ホイップ・クレープ、有象無象の大衆には「大賢者」久しい友には「オメガアンサー」っと呼ばれているわ。世界線 航さん」

「こ…!」

「ここは始まりの街ルミネよ、大きな時計台が特徴だわ」

 会話になってるが会話が成り立ってねえ…っと思った世界線 航。

「か…」

「仕方ないでしょ時間無いんだから、あとデイライフは筆記でも発動するからそこのチョークを持ちなさい。顎が飛ぶわよ、血でフでも書きなさい」

 大賢者クレープが指さした先には魔法陣を書き終わった後のチョークが

 あった。そこまで言い終わると「果ての答えを出す者[オメガアンサー」の発動を解き、赤い目が黄色い目に戻った。

「なぜ顎?」

「さあ? 私にもわかんない。文脈から察するに喋れなくなるんじゃない?」

 ドゴン!っとドアが爆発する音がし、兵隊達がドゴドゴと部屋の中に入ってきた。銃を構え殺す気で来ている。

 大体話し終わった大賢者クレープは満足げに、にこやかに笑う。この状況で笑う度胸に感服したと同時に可愛らしくてどきっとした。

「さて、私は何をすればいい?」

「何って…俺にもわかんねえよ…」

「じゃあ次に飛んで、また私に質問して」

 次の瞬間、銃声が鳴り響く。彼女の体をズタズタに貫通し少年の右顎を吹き飛ばす。

「アガアアアアア!!」

 少女は倒れて人形のような魂のない骸と化した。

 顎が無ければ喋れない。これでは呪文は唱えられない。はいずり回る航だが冷静に今必要な記憶を蘇らせる。

「自分が死んだら戻れないぞ」

「この目は「果ての答えを出す者(オメガアンサー)」

「筆記でも発動するからそこのチョークを持ちなさい。顎が飛ぶわよ、血でフでも書きなさい」

 さっきのやりとりをフラッシュバックし、真っ先に地面に落ちてるチョークを手に取る。

 急いで「デイライ」までカタカナで書き終わったその時。ドゴンと銃声。

「ぎぇえぁあああああああ!」

 鳥が絞め殺されるような悲鳴の後。人差し指と親指の先端が吹き飛ばされた。チョークは粉々になり書ける状態ではない。まるでボールペンのペン先からインクが垂れてるような書きやすそうな紅いものを出していたが。痛い。痛烈に痛い。

「フー!フー!フー!」

 全身全霊渾身のフを石畳の床に書き記すと。デイライフは発動した。

 世界は静止し。ゴーンという除夜の鐘のあと豪華な時計が出現し、針は高速回転。

 地震のような地鳴りが鳴り。

 テレビがブツンと切れ漆黒が画面を埋め尽くした後。

 意識が再起動された。

 

 再び目を見開き、はぁはぁっと嫌な汗をかきながら召喚される。

 まず最初に飛び込んだのは賢者少女の「やったぜ実験は成功だ!」っと言わんばかりの笑みだった。

 次にあたりを見渡す、時計は0時00分。右手に視線を移したら右手が[あった」。 

 すると、賢者少女はすぅっと一呼吸おいてから持っていたメモ帳を手に取り。まるでテストの答え合わせをするかのように質問する。

「さて…私は初めてだけど、一応聞いておく。あなたは今何週目?」

 航は呼吸を整えながら答える事に専念した。有効な時間は1分、余計な事を推測する時間は惜しい。というか想像以上に「今」がやばい事を理解してしまった。

「…、3週目だ…。お前、ここまで計算してたのか…」

「…、まーねー。でも3週目かー先は遠いな…」

「先ってことは終わりはあるのか?」

「ん~駒を使うボードゲームならあと7手ぐらいでこの部屋はクリアして欲しいかな~って淡い期待はしてる。そのためなら命を賭けて協力するよ!」

 文字通りの意味で言ってるな…とは言わなかった。すでに2回彼女の死は体験してしまった。航の盾となって…、自分も毎回痛い思いをしてしまった。冗談じゃすまない怪我だった。これ以上彼女の死は観たくない。

「じゃあまず質問だ、あのドア意外に逃げ口はないのか!」

 あたりを見渡しても、大きな古時計と鏡、勉強机、石畳の魔法人と床に転がってるチョーク、窓は無く、ドアは一つでそのドアは魔王軍が航達を殺そうとドンドンと叩いている。軽く密室殺人でも起こってしまいそうな状況だが、クレープは鏡を指さす。

「説明は終わったんだね、じゃあ行くよ!」

 クレープは鏡に向かって走り出す、するとクレープは鏡の向こう側へすり抜けてしまった。某魔法学校小説で駅の柱の中に飛び込んで魔法科専用の駅に行ってしまうようなあんな感じだ。

「ちょ! 待ってくれ!」

 航も少々戸惑ったが鏡をすり抜けて走る。

 ドゴン!っと途端に部屋に入ってくる兵隊は航達二人を見失った。

「くそう!どこかに隠れたか!」

「構わん、家ごと爆破しろ」

 二人は走る、鏡の向こう側は下水道になっており。街中の川に繋がっていた。だいぶ走って疲れていたが光が射す方に走り出口が見えた。月明かりが綺麗な夜だった。

「今は…夜なのか」

 これでわかったことは夜の0時00分ということ。本当に危なかった。

 はぁはぁと息を整えているとドゴンと遠くで爆発音が聞こえる。

 ホイップ・クレープの家が爆破された音だ、遠くから火事とも思える煙が見える。

「はあ、ついに私も家無き子かー」

 クレープがうなだれている間に空から飛行物体が高速で急降下してくる、騎竜だ。

「くそう!見つかった!お前大賢者なんだろ!ここが剣と魔法のファンタジー世界なら魔法ぐらい使えないのか!」

「はあ!?まだ聞いて無かったの!?デイライフをあんたに与える代償に私は今後一切魔法を使えなくなったの!」

「はぁ!?」

「くそう!1手遅れた!今回は良いからさっさと飛びな!ほーら騎竜さんこっちだよー!」

 そういって航に危害が加わらないように離れて右側の通路へ走って逃げた。

「おい!」

「さっさと飛びな!別に死に様を観る必要なんて無いんだ・・・ッ」

 ドゴンっと痛烈な爆撃音が響いた。クレープが走って行った右側通路を騎竜が追いかけてダイナマイトとも似た爆裂音と共に炎が舞った。

「クレープ!」

 右側通路を曲がり観ると、クレープは燃えていた。そして・・・上半身が無かった。完全に、跡形もなく吹き飛んでいた。死んでもなお立っていた。

「あ…あぁ…」

 そして大事な情報がフラッシュバックする。

「自分が死んだら戻れないぞ」

「…そうか…、俺が死ななければクレープは生き返る事が出来る…。あいつはそう考えてるんだな…」

 怒りが爆発しそうな中、恐怖混じりに両手が震え出す。

 彼女の笑顔が何度もフラッシュバックする。

「畜生畜生!ふざけんな!自分は全てを投げ捨てて俺に託しただと!何にも知らない赤の他人の俺に!」

 世界線 航はここで初めて恐怖を流すように涙を流した。しかしここでは昔の大切な思い出は思い出せない。

 ドゴン、次の瞬間には世界線 航の右足は爆裂四散していた。片足が無くなりバランスを取れず地べたに這いずり回る。豚の断末魔のような鳴き声とも呼べぬ悲鳴の後、涙ながらに声を絞り出す。

「やってやる!まずはこの状況を打開してからこってりと説教してやる!命は軽くないんだ!大切なんだ!何回も死ねるから大丈夫とかそんな考え俺がぶっ飛ばしてやる!」

 騎竜によるダイナマイトのような火炎放射が発射される、航の発声が間に合うか間に合わないかの瀬戸際のようなそんなギリギリのタイミングで。

「デイライフ!」

 デイライフは発動した。

 世界は静止し。ゴーンという除夜の鐘のあと豪華な時計が出現し、針は高速回転。

 地震のような地鳴りが鳴り。

 テレビがブツンと切れ漆黒が画面を埋め尽くした後。

 意識が再起動された。 

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