第4話-④

その日の夜。

ガチャッ、ガチャ!キィィィ…。


「ただいまー!」

バタム!カチャカチャ。


「あ、お父さんおかえりなさい。」


えっ……?お父さん?なんで、なんで?どういうことだ??



「ちょっと、憑島。どういうことだ。」


「うーん……。ごめんなさい、私にもちょっとよくわからない。

亡くなったお父さんを見るのは、つらいよな?しかも、あなたはお父さんを目の前にして話せないわけだし。私のわがままのせいで、こんな目に遭わせてしまって申し訳ない。」


「いやいや、それは別にいいんだ。むしろ逆によかった、というか…。」


「そう?ならまぁよかった。詳しいことはあえて聞かないでおくよ。」



僕はこんな虚しい空白の時間を後どのくらい過ごすことになるのだろうか。

たった1日だけでも僕はこんなにも気持ちが塞いでいるのに、憑島は僕と出会うまでの時間をずっとこんな風に過ごしてきたわけだ。そう考えると、しばらくなら、貸していてもいいかな、なんて思った。

それに、話すことはできないけど、お父さんを見ることだってできるし。

こうして改めて、「父親の死」に対して真正面から向き合う時間が、今の僕には必要な気がするし、そうするべきなのだ。


「お、そうだ。零士くん、この体をいつ返すか伝えていなかったな。」


「え、それめっちゃ重要なことじゃないすか!忘れないでくださいよ!」


「ハハ、悪い悪い。

3日間だ、3日間、私に君の体と、君の『なんでもない普通の日常』を貸してくれ。もちろん、必ず返すから。」


「3日か…。長いな……。でも、いいですよ、せっかく憑島さんも僕と入れ代わったわけだし。」

その時は、僕はそう感じていた。


「あ、それと、名字で呼ぶのは止めにしてくれないか。 『妖乃』って呼んでくれ。」


「あ、わかりました。僕のこともよかったら『零士』って呼んでください。」


「もうすでにそう呼んでいるだろ?後、敬語も禁止だ。」


「あ、そうですか。わかりました。これから3日間よろしくね、妖乃さん。」


「うん。改めてよろしく、零士くん。」


こうして、僕の3日間の不可視〈インビジブル〉ライフは幕を開けた。

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不可視〈インビジブル〉 戦慄の抹茶 @senritsu-mattya

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