ショートショート11 謎解きは終わりを迎える

「犯人はあなたです、猛部人志たけべ ひとしさん」

「な、なんだと!? どうして俺がアイツを殺したと分かったんだ!」

「それでは事件の概要とともに説明しましょう。

「被害者の葛木明くずき あきらさんはお金遣いが荒い人だった。方々の友人を訪ねては借金をしていたそうですね。そのため、彼を疎ましく思う人は多かった。その中にはあなたもいた」

「ああ。人から借りた金で酒呑み、ギャンブル、女遊びを繰り返すアイツが心底憎かった。これ以上葛木という人災による被害を無くすために、俺は殺すことにした。でもよく俺が犯人だと分かったな。凶器だって完璧に処分したはずなのに」

「それは被害者の外傷と彼の嗜好から割り出せました。まず、被害者の死因は鈍器による殴殺でした。凶器については犯人が事前に用意していた可能性もありましたが、この部屋に無くてはならない物が見当たらないことに気づいたんです。愛煙家であるはずの葛木さんであれば必ず持っているだろう、アレを」

「愛煙……煙草……はっ、まさか!」

「そうです。この部屋には灰皿が一つも置いてないんです。毎日のように煙草を吸ってらっしゃる葛木さんならば灰皿は必須。それなのにどこにも無かった。何故? それは殺害に使われたのがまさに灰皿だったからです。しかも、葛木さんが最近使ってらっしゃった灰皿はあなたがプレゼントした物らしいじゃないですか。それも人に致命傷を与えられそうな硬い陶器製の物を。そこでワタシはピン、ときたんです」

「ふっ、さすがだな。見事な推理だよ。駆け出しの探偵と言っていたが、キミは紛れもなく名探偵の資質を持っている。俺が自首をする前に教えてくれ。キミの名前を」

「いいでしょう。更生への旅路の土産にもらっていってください。普段はR中学で勉学に努め、その傍らで様々な難事件に挑む──華の女子中学生にして新米の私立探偵。鳴田貞なるた ていとはワタシのことですっ」

「いや、女子中学生で私立探偵は違法じゃね」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る