第3話「珈琲専門店に入ったぁ。」

 同日。


「珈琲専門店に入ったのよ」


 昼食を摂ってから家を出たので、薔薇園という目的を果たした今、祖母、母、わたくしの三人は、どこか物足りないような、つまらないような空気が流れていた。


 なので贅沢にも、珈琲店でホットケーキとワッフルを三人で切ってわける。


 季節のフルーツがのったホットケーキは、母が四つに切り分けて、わたくしがメイプルシロップをこれでもかとかける。



「タラタラタラタラタ~♪」



とエリーゼのためにを歌いきるまで。

 Aフレーズ、A'フレーズ、Bフレーズ、Aフレーズ、サビ、Aフレーズ、と。

 母が喜んで、瓶で出されたそのシロップをスプーンに注いで食べること。


 パンケーキ、それより先に出てきたワッフルも、ソフトクリームが小皿に盛りつけられて出てきて、ワッフルにつけて食べると、さっくりと口に広がる香ばしさに、冷たいソフトの甘く、ひんやりとした味わいが素晴らしかった。


 周囲は週末なので混みあってはいたが、自分たちと同じなのだ。みんな、親しい人と仲良くしたい日。


 ソウ・イッツァ・プレシャス・デイ! なのだ。


 黄桃、イチゴ、キウイ、生クリームなどが乗っていて、パンケーキのやさしい甘さにも舌鼓。



 飲み物は、祖母がコーンスープで母が珈琲、わたくしは‘フラワーガーデン’のハーブティーを頼んだ。


 コーンスープは意外と、大きくてしっかりした、カップに入ってた。

 今日はせっかく花園にいったのだからと、わたくしが祖母にハーブティーの香りを勧める。ちょっとティ―カップの向こう側から飲んでももらった。


 このハーブティーは黄色い砂時計がついてきて、祖母が目を見張るのがわかった。


 こういう趣味は、母と共通するんだな、と思った。


 わたくしはことさらはしゃいで、自分のハーブティーをおススメしていたから、母は身を乗り出して、自分も、



「ここは珈琲専門店だからね」



と、珈琲の香りをかがせた。


 豆からひいた感じがする!


 ハアー! 素敵な午後だった。


 すごくハッピーだ。



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