第5話 三笠大掃除
「ふんぎゃーー」
「なんだずーーーー」
倉庫の扉を開けると、二人は飛び出てきた物に、押しつぶされた。
中から転がって来たのは、雲型やペンギンのぬいぐるみ。
更に、大量の本が転がっている。
これは、私が、【空艦少女大戦】で得た物。
「【航空主兵論】、著者が
「【ミッドウェー海戦の全て】、
「成程、大艦巨砲主義の時代は終わる……航空機の時代」
「艦隊の連携は常に、緊密に行うべし。暗号・レーダーという物も重要、海ってなんだがにゃ?」
二人共、手に取った本を見ながら、呟いている。
それを、聞いている私は内心汗タラタラ。
何故かって、元が、その二人を、美少女キャラにした物が、彼女達だから。
っていうか、運営!
どうして、本の中身まで真面目に作りこんだし!
っと内心毒づいた。
取り敢えず、【料理クッキング】という表題の本を手に取った。
内容は、私がクックな
運営もタイトルだけ変え、手を抜き、スキャンした物を入れている。
「取り敢えず、軍関係の者はこっちに置くね」
「こっちは、日常的なものだがにゃ」
本をパラパラと見ながら、二人はドンドン分けている。
私も選別を始めるが、色々と拙い物が有った。
【零式艦上戦闘機】【九六式艦上戦闘機】【月光】【震電】の情報が記された【戦闘機全集】。
更に、拙いのも出てきた。
【橘花】【キ201 (火龍)】【桜花】の設計データ等が書かれた【幻の噴式戦闘機達】。
未だに、この世界は複葉機の時代。
こんなのが、空艦少女の目に止まったら、艦と契約した彼女達の魔法で精製されたら……。
っと思ったが、逆に良いのかも知れない。
乙女エンジンを主に使っているのは、ヤマト国だけ。
契約には、ヤマト国への誠実な忠誠が入っている。
そして、大空襲で、多くの命が失われ無い様に、準備しとくのも良いだろう。
まあ、一番の心配は、物資豊富なアメリゴ国にこの技術が流失する事……。
もし、大量生産され制空権を奪われる事が起きたら……。
その時は、三笠でアメリゴ国全土を死ぬ気で、襲撃すれば良いか……。
何より、私の
私が、サライェボに行っている間に、二人にお願いしよう。
仕事が、ひと段落している、二人の方を向いた。
「ねぇ、二人共、この間、古い島で、探索してみたらこんな本が有ったの」
「え、何何」
「なんだべー」
「ここ、ここ、此れは」
「やまんさ、鶏みたいだべ」
「どうやら、超古代文明が残した本みたい……使えないかな?」
「うーん、設計とデータらしき物があるけど、原理が乙女エンジンじゃない」
「やまんさ、ココだけ、乙女エンジンに変えれば、よかんけ」
「魔導エンジンに変えて、乙女エンジンと
「そうだがや、うちらの仕事も楽になるべ、陸軍の男にも、やらせるべや」
「陸空の合同部隊にするの?」
「そうだがや!」
超古代文明の本、二人が納得してくれるのは、訳が有る。
【空艦少女大戦】の世界では、一つの大陸・超古代文明が有り、多数の種族が共存していた設定。
その時は、海という物が存在してた。
だが、超古代文明は、突然消滅した。
同時期に、大陸がバラバラに分解、海が雲に変わった。
そして、中国大陸や朝鮮半島地域が消滅した。
その為、イルクーツクが雲界に面し、船の空港として活躍している。
まぁ、何処の世界でも、
運営は、面倒な特定の亜細亜の国々との問題を避けた。
その為、天変地異で大陸が分裂時に消失した、という設定にした。
空いたスペースに、多数の無人の浮き島を配置。
そこに、資源や古代の文明の遺跡等が、置かれている設定にした。
それを巡って、ヤマト国やルーシア帝国、列強が争う構図にした。
【二百三鉱地】で、ヤマト国はルーシア帝国と戦った。
建前は、産出する、オリハルコンやアダマンタイトの資源戦争。
本音は、乙女エンジンに不可欠な、
国家の存亡、この一戦に有り、で有った。
それ以外にも、ウィスキーの生産方法。
丸い氷と炭酸を入れる
だが、ウィスキーで、同じくルーシアと争うエングランド王国と同盟を結び、対抗する事が出来た。
エングランド王国は、中東のスエズ雲河を支配している。
その為、ルーシア帝国は苦難の航空路を選び、ヘトヘトの中で、私の連合艦隊と出会い、撃滅された。
まぁ、そういう訳で私が過去の航海で見つけた物を、倉庫に置き忘れても、違和感が無い。
「ところで、陸空の合同名称何にする?」
「んだべ、東郷さ良い案ないだべ?」
「んー
「それなら、
「だけんど、二文字は長いっぺ、一文字で、
忠子ちゃんは、開けていた本の一ページを差す。
【
内容が変だなと思い、本の出版社名を見ると【民明書房(運営)】と書かれいた。
「それでいいや!決まり!」
「んだな、東郷さもいいべや」
「う、うん、いいと思うよ」
画して、空陸の合同部隊のエリート部隊、海軍が結成された。
本来なら、陸海の空軍戦力から合わさった、独立部隊が空軍。
心の中で、歴史家の皆さん、海が無いのに、海軍とか意味不明でごめんなさい、と謝った。
暫くして、倉庫内の分別が終わると倉庫の中は、大量に施錠された、ヒノキの箱が置かれて居た。
二人は鍵が無いために、開けられず、置きっぱなしにした様だ。
碓か中身は碓か……っと思って居ると、ブーブーと警笛の音がした。
窓を開けると、大型のトラックが多数、入口の方まで、鈴なりに止まっていた。
先頭のトラックから、現れたのはイケメン少将、
「元帥閣下、用意して参りました、物資の搬入をお願いします」
「分かりました、開けますー!三笠搬入して!」
三笠の左舷中央がガゴンと観音開きで開き、外の景色が見える。
甲板上のワイヤーが、トラックの荷台に行き、触手の様に触る。
やがて、木箱やドラム缶が、ワイヤに入れられる。
運んできた、運転手達も信じられない様な顔をしている。
三笠は、生き物だもんね、仕方が無いよね。
倉庫に丁寧に順序だって入れられ、全ての物が入ったが余裕が有った。
「凄いですね、まさか本当に入るとは思いませんでした」
「そんなに、凄いのですか?」
「少なくとも五年分は、入れました」
「ええ……ええええ」
「私もそう思ったのですが、姫様から言われました。後、現在、大量の資源が溜まっている為、放出と商売を兼ねて……」
「ああ、そういう事で……」
姫様というのは、
私の艦内の倉庫は、時間が止まったかの様に、物が腐ったりする事は無く、容量は無限に近い。
後、現在はルーシア帝国の戦争が終わった為に、食料等の物資がダブついている。
市場に開放したい所だが、一気に放出すると市場が混乱し、農家や企業にダメージを受ける。
つまり、皆貧乏、質素倹約で、団結して貰った方が、政府としては国政を安定出来る。
其処で、私の船に入れて長期保管。または、高く売れる市場で売ってこいというわけだ。
其れが、空軍大臣と打ち合わせた、日本国債回収の一つの方策でも有る。
少将から渡された目録を見ていると最後に、
「少将、最後の欄に
「ふふふ、お気づきに成られましたね!いでよ我が弟!」
箱が開き、入っていた豆がポロポロと落ち、中から空軍の第一種士官服を着た男の人が出てきた。
「我こそは、ヤマト国空軍少佐、
兄弟ってやっぱり兄弟だわっと思っていると、三笠は出し抜かれて、悔しいのか豆をワイヤーで拾って投げている。
少佐は少佐で、投げられた豆を鯉の様に、口を開けて食べている。
そして、少佐の両脇には、猫が抱えられている。
「ああ、此れは、猫です。黒い方がナツメ、白い方がソウセキです」
「船に猫は、入れ置いたほうが良いので、さねの家猫を持って来ました」
「黒い方を、スターリン、白い方をヒトラーって名づけて良いですか?」
「閣下の好きな名前で、呼んで上げて下さいませ」
私は、少佐が下ろした二匹の猫の喉元を撫でる。
一匹は黒にハの字の白い髭の顔、もう一匹は白と黒が七三分けに黒いチョビ髭。
どうみても、私の世界で見たスターリンとヒトラーに、そっくりな猫。
「少将閣下、所で、いつごろ出発します?」
「一週間後です、サライェボの結婚式が八月二十八日に有ります」
「今日が、六月二十一日ですから、二ヶ月掛けて行くのですね」
「その通りです」
「一週間後、お待ちにしています」
「それでは、一週間後に」
私は、少将と少佐を見送り、友の方を見る。
二人は、分別作業に疲れたのかソファーで、寝息を立てていた。
私は、夕日の窓をカーテンで締めた。
そして、寝顔が可愛い美女二人にシーツを被せ、一緒に寝ることにした。
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