幼馴染みと再会4『トラック由来の力』




 そうこうしてるうちに輩どもが接近していた。


 レグル嬢には馬車へ退避してもらい、俺たちは迎撃の態勢をとる。


 シルフィにも隠れているように言ったが『仲間を襲う連中は絶対に許せない!』と熱くなって下がってくれなかった。


 まあ、シルフィが介入する隙を与えなければ危険は及ばないだろう。



「おい、どうなってんだ? エルフが三匹もいやがるぜ? 里を出てくるのは一匹だけじゃねえのか?」


「んなことより銀髪のエルフを見てみろよ、エルフでもあそこまでの上物は見たことねえぞ」


「人間の女までいるじゃねーか。どういう理屈か知らねーがニッサン方面の連中が消えたっていうから代わりに請け負ってみれば、とんでもねえ幸運が転がり込んできたもんだ!」


「お頭ァ! 人間の女はオレらで自由にしていいんだよな?」


「ああ、捕まえて連れてこいと言われてるのはエルフだけだしな……」


「この仕事が終わったら当分は愉しめそうじゃねえか!」



 舌なめずりをする輩ども。連中の欲望に歪んだ表情は実に醜い。醜悪である。


 外の暮らしを経て人間のブサイクなやつにも耐性ができている俺やジンジャーですら顔をしかめたくなるゲスさ。

となれば、エルフ里から出たばかりで人間の顔の基準に慣れてないシルフィが目の前の輩どもを見たら――



「なにあいつら、気持ちわる……おろろろろろろろろろろっ……」



 シルフィは眩い奔流を口から放出して気絶した。


 俺もやっちゃたし、他のエルフも通った道らしいから仕方ないね。



「この野郎! 人の顔を見て吐きやがるとは!」


「だからエルフってのは鼻持ちならねえんだよ!」


「どいつもこいつもお高くまとまりやがって!」



 輩どもは激怒していた。


 俺の時にいたような変態属性のやつはいないみたいだった。





「お前らはアレか、奴隷商の連中からの回し者か?」


 素直に話してくれるとは思わんが試しに俺は輩どもに訊いてみる。


「ん? エルフがそんなことをなぜ……そこにいる人間から聞いたのか? ま、そいつはお前が知らなくていいことだぜ! お前らはここで一生奴隷になるんだからな!」


 意外と教えてくれた。


 詳細は語ってこないが、それは後で締め上げればいいだろう。


 今は――


「みんなは馬車の周囲を守っていてくれ。こいつらは俺が無力化させるから」


 ジンジャーが意識を失ったシルフィをよいしょよいしょと言いながら馬車に運ぶのを横目で見ながら、俺はエヴァンジェリンとデリック君に伝える。


 こういう多数に囲まれる展開は想定済みであり、それでも貴族令嬢であるレグル嬢が少数の護衛のみでついてきたのは俺の戦闘力を見越してのことなのでエヴァンジェリンたちはスムーズに頷いてくれた。



「へっ! エルフが魔法に長けた種族だってのは知ってんだよ! けど、残念だったな! こいつを食らいな!」



 俺が単騎で歩み寄っていくと、前回の連中と同じく彼らはドヤ顔で魔法を使えなくする銀色の粉を撒いてきた。


 だが、俺のパワーは魔法じゃない。トラック由来の力なので無意味である。



「おりゃぁ!」



 俺は輩たちの群れにダッシュで飛び込んでいった。



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