決闘と成果3『審議』




 フィーナに瞬殺された貴族生徒マカセーヌは泡を吹きながら担架で医務室へ。


 そのままの勢いで二回戦……は開始されず。


 現在、決闘は中断され、審判団を交えて審議が行われていた。



「だから、さっきのは魔法じゃなくて直接攻撃だろ!? 反則だ! この卑怯者!」


「あれは立派な魔法による攻撃なのだよ!? 言いがかりはやめるのだよ? この浅学者!」


 ラッセルとラルキエリが激しい剣幕で主張をぶつけ合っている。


 負けたからっていちゃもんとは。


 ダサい男め。


 鮮やかな勝利にケチをつけるなんて無粋だぞ。



「フィーナ? もう一回、さっきの術を再現して見せるのだよ?」


「はいですよ! ふんっ!」


 ボッ! フィーナの右拳が魔力で作られた炎で包まれる。


 それを間近で見た審判の魔導士たちはおおっと声を上げた。



「「「ほう! これは!」」」



「この通り、実際に相手に衝撃を与えたのは魔力によって生成された炎なのだよ? これを手に纏いながら叩き込んだのであって、フィーナは決して魔力を用いない直接攻撃を行なったのではないと断言させていただくのだよ?」



 ラルキエリが審判たちに向けて説明を行なう。



「なるほど、これは炎の魔力を纏って……おお、随分と魔力濃度が高いな!」

「むむぅ、フレイムウォールの簡易版なのか?」

「だが、限定的で範囲が狭い……。遠距離に展開することはできないのかね?」

「拙い魔力操作でも実用に耐えられるよう、遠隔的な操作性は排除してあるのでは?」

「なるほど! だから平民の生徒でも無詠唱で即時展開できたのだな」

「この術は繊細なコントロールより、魔力の単純量が肝のような気がするね」

「従来の魔法とは方向性が違うようだな……」



 審判の魔導士たちは審議から次第にフィーナの使った魔法の仕組みや有用性についての談義に移行し始めた。


 彼らも普段は魔術を追求する者。


 今までのアプローチと違う形態の魔法に興味が湧いたのだろう。



 あーだこーだ、あーだこーだ……。



 いや、研究熱心なのはいいんだけどさぁ……。



「そろそろ結論を出してもらおうか!」



 グダグダになりそうだった審議にラッセルが割って入った。



「魔法を武具のように身に着けて自らが前に出て戦うなど魔導士の戦い方ではない! 相手を殴りつけるという野蛮な行為に魔法を介在させるなど、知恵を探求する魔導士に相応しくないのは明白! これを魔法による攻撃と認めるのは我々に魔法を授けてくれた神や精霊に対する冒涜と言っても過言ではない!」



「ほう、では攻撃魔法の定義とは何なのだよ? もし、攻撃魔法が一定の離れた距離から放つものに限定されるというのなら、それは確かに反則ということになるがね? だが、君は使い方が気に入らないというだけで同じ魔法によって生みだした力を差別するのかね? 自分の好みに合わない魔法を魔法と認めないのは驕りではないのかね?」



 ラルキエリの煽りは前に食堂で驕りが過ぎると言われた意趣返しだろうか。



「僕は魔法に対する侮辱行為だと言っているんだッ!」


「やれやれ? 屁理屈か? なのだよ?」


「屁理屈は君だろう!」



 ぐぎぎ……と睨みあい、ラルキエリとラッセルは審判団に目を向ける。



「こんなものは無効だろ!?」


「有効なのだよな?」



「「「ふぅーむ……」」」



 そして、結論は下された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る