披露と来訪3『滅されたほうがいいぞ』
道中、錬金術師学の薄毛教師とすれ違った。
「き、君ィ――ッ! その子はもしかしてッ! 頼む! 髪の毛を一本くれぇ! できれば唾液も採集させてくれないか!?」
「やー!」
「消えろ、このハゲ!」
土下座までしてくるとか末期だな。
その試験官とシャーレはどっから取り出した?
この学校の教員は幼児愛好家ばっかりか……。
滅されたほうがいいぞ。
「……なあ、本当に基礎魔法の授業にくるのか?」
「うん、なんかおもしろそうだし」
実技魔法を見逃し、てっきり帰るのかと思っていたらリュキアは代わりに次の授業を見ていくと言い出した。
あんなの見る必要ないのに……。
教室が違うルドルフと別れ、基礎魔法の教室がある地下に着くと、リュキアが辺りをキョロキョロ見回しだした。
「どうかしたか?」
「ともだちのにおいがする……」
すんすんと鼻を鳴らし、リュキアは廊下をうろうろする。
「へえ、お前の友達って学園の生徒なの?」
「えぇ? わかんなーい!」
なんだそりゃ。つか、匂いってすごいな。そんなんわかるの?
結局、匂いだけで本人はいなかったようだが。
ボロいドアを開けて教室に入る。
リュキアとメイドさんを連れていたため、教室の生徒たちはざわつく。
ポーンとかツインテ少女は口をパクパクさせ、小太りの男子生徒はバナナを握り潰していた。
そうだよな。こいつら貴族じゃないし、メイドさんは珍しいよな……。
「あの、そういうことではないと思いますけど?」
メイドさんが冷静な口調で言った。
またまた、照れちゃってからに。
んで。
教室の後ろのほうでリュキアとメイドさんは授業参観をすることになったのだが――
「うふふん? じゃあねぇ? みんなぁ? 今日も頑張ろぉ? えいえい、おぅ~だよぉ!?」
今日もすさまじいな。
案の定、開始三分ほどでリュキアたちは帰って行った。
しゃーない。
◇◇◇◇◇
実技魔法で筋トレを披露してから四日が経過した。
たまにランニングをしている生徒もちらほら見かけるようになったが、ほとんどの生徒は周囲の目を気にして興味はあっても実行に移せずにいるようだった。
まあ、魔法は机にしがみついて学ぶものって固定観念があるっぽいからな。
そう簡単に意識の刷新はできないか。
何かもっと大きな後押しがあればひっくり返せる気もするんだが……。
まだまだ時間がかかりそうだ。
ところで、今日は授業がない休日である。
さて、何をしようか。
奴隷商の協力者を探し出そうにも、まだ知り合いと呼べるのはルドルフや基礎魔法で一緒になった平民学生たちくらい。
聞き込みをしていくには人脈が心許ない状況だ。
「とりあえず、協力者が生徒である可能性は低いのではないでしょうか? まだ当主ではない学生に組織の暗躍に手を貸す何かができるとは思えません」
メイドさんが分析を口にする。
なるほど、密書には『王立魔道学園の協力者』とあった。
相手が生徒の親の貴族当主ならそういう書き方はしないよな。
だったらまずは教員を中心に目星をつけていけばいいってことになる。
一気に候補が絞られたぞ。
でも、これ、学園長とかだったらどうすんだろ。
あれ、ひょっとしてこいつは相手によってはかなりやばい案件なのでは?
こんなのを俺が一人で暴くの?
「はあ、いまさらだと思いますが……」
「…………」
安請け合いした任務の大きさを今頃になって知った。
そんな休日の昼下がりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます