4話 : 白い花、ゲットだぜ!


アッサム「声、か……」




僕は今、裏山の山頂へと向かって歩いている。さっき、赤ずきんは「声を取られた」と言った。魔物はどうやって「声」を取ったのだろうか。


ただ、いくら考えたところで今の僕にできることは酒場にいた女性のクエストを果たすことだけ。今はこっちに集中しよう。そうすれば、きっと新たな情報が手に入るはず。




アッサム「白い花……か」



??「お前も、あのクエストを受けてきたのか」




突然、草むらが話しかけてきた。………いや、正確には草むらに潜んでいた何者かに、なのだが。




アッサム「……だ、誰だ!?」



??「すまんすまん。俺もあのクエストを受けてここに来たんだけどよ、見つけらんなくてな。……その格好、お前も冒険者か」



アッサム「……まぁ、成り行きでなったようなものだけど。僕は本当の冒険者じゃないから、死んだら死ぬよ?」



??「はは。何だ、それ。そりゃ死んだら誰だって死ぬだろう。でもまぁ、言いたいことは分かった。要するに、俺たちみたいに復活出来ないってことだろ? けどよ、ここにいるってことは、あの犬っころに殺されなかったわけだ。それなら認められたってことだろ」




がたいの良い男は能天気なやつらしく、重大な事も気に留めない。




アッサム「……まぁ、いいや。それより、お兄さんの名前は?」



コジー「あれ? 名乗ってなかったか? 俺はコジー。職業は守護者ガーディアン。よろしくな」




コジーと名乗ったそいつは片手を出してきた。それが握手を求めているということに気付き、僕は差し出された手を握り返した。




アッサム「僕はアッサム、よろしくね。もとは村人だから職業とか……」



コジー「職業なんてのは自分の得意なこと、好きなことをすりゃあ良いんだよ」



アッサム「ん〜、好きなことか……狩りとかなら得意だけど」




父親の店に出す食べ物の採取を、僕も手伝っている。そのため猪や兎などを小刀や弓矢で仕留めることが出来る。


まぁ、どちらかと言えば弓矢の方が得意かな。弓矢を扱う職業といえば、弓兵アーチャーしか出てこない。だが、そこまで上手いわけでもない僕にあう職業なんてあるのだろうか?





コジー「なら、狩人とかは?」



アッサム「狩人?」



コジー「おぅ。弓矢で敵を攻撃したり、あとは……なんだ? ほら、狩りで使う道具で攻撃したり……まぁ、そんな感じだ」



アッサム「なるほど、大体分かったよ。それじゃ、村に帰ったら家から弓矢持ってくるね」



コジー「その前に、クエストクリアしなきゃだろ」



アッサム「あ…そう言えば、白い花ってどこだろう……?」




僕は周りを見渡した。僕が来るより前にここへ着いたコジーがある程度探したらしいのだが、それらしきものはなかったと言う。




アッサム「一番上…… 一番上…………… 一番上?」




僕は上を見上げる。目の前にはここら辺でも飛び抜けて高い木がでかでかと立っていた。




アッサム「……もしかしてだけどさ、木の上にあったりしないよね?」



コジー「お、そこは探してねぇな! じゃあこれは その為のものか?」




そう言って取り出したのは、鉤爪のような先をした道具だった。それは よく親父が使っているものだ。名前は知らないが……とにかく、それがあるなら話は早い。




アッサム「それ、どうしたの?」



コジー「いや〜、クエスト受けたらアイテム欄に入っててよ……何に使うのかいまいち良く分かんなかったんだよなー」



アッサム「アイテム、欄?」




僕は首を傾げる。


そういえばコジーはさっき、手には何も持っていなかったはず……いつ、どこから取り出した?




コジー「ん? アイテム欄分かんねぇの? ポッケ開いてみ。たぶん、そん中あると思うぞ」




僕は言われた通りにポッケの中を見てみる。だが、そこには何も入っていない。当たり前だ、何かを入れた覚えなどないんだから。




コジー「あれ? 入ってねぇの? んー? バグか何かか?」




腕を組んで唸っているコジーに、僕は手を差し出した。




アッサム「じゃあ、それ貸してよ。僕が行ってくるから。どう見てもコジーより僕の方が身軽でしょ?」



コジー「……こんな子供に託すのは気がひけるが、ここは甘えるかな」




渋々渡してくれた それを受け取りながら、僕は言い返す。




アッサム「何だよ……僕はこう見えて十三になるんだ。そんなに子供じゃないよ。コジーだって、言うほど歳でもないでしょ?」



コジー「お前、十三歳なのか!? その身長で!?!?」



アッサム「失礼なっ!!」




そりゃ、村の中でも小さい方だけど……でも、初対面のコジーにそこまで言われる筋合いはない気がする。


そう内心で文句を言いながら、コジーの姿をマジマジと見直す。23歳くらいの見た目で、赤茶色の髪に緑の瞳、がたいのいい体には程良く筋肉が付いている。僕より30cmくらい高い身長で、親父と同じくらいの身長だろう。




コジー「いやぁ〜〜、若い若い。こう見えて、俺は今年で三十歳になるおっさんだよ。ま、この中じゃあ年なんて設定しても、ランダム作成だと二十代前半くらいだろうから無理もないけどな。いやぁ〜、若者向けのゲームは素晴らしいな! 若返れる!」



アッサム「お、おじさん……だったのか」




そんな下らない会話の後、僕はおじさ……コジーから借りた道具を使って、案の定 木の上にあった白い花を手に入れた。



今は、その帰り道。山道を下っている最中だ。そんな中、目の前から山を登ってくる人を見つけた。その人は珍しくも何も身につけず、山を登ってきているようだった。まるでのように…。そして、その人とすれ違う時、その人は僕を見ながら叫んだのだ。




??「そ、その鎧はっ!!!」




-*-*-*-


【アッサム ー村人ー】13歳(♂)


【ウル ー狼ー】6歳くらい(♂)


【?? ー冒険者ー】27歳(♀)


【村長 ー??ー】86歳(♂)


【赤ずきん ー想像上の存在ー】9歳(♀)


【コジー ー守護者ー】30歳(♂)

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