僕がネコ型ロボットを造るにあたって証明すべき幾つかの有用性の模索活動録
津々浦 麗良
少年と本とネコ型ロボット
読む必要もない言い訳のような導入
『2112年9月3日
私はこの記念すべき、忌まわしき、屈辱的今日という一日を生涯決して忘れることはないだろう。
我が人生のほぼ全てをこのロボットの製作に費やし、何としてでもこの日までに完成させたかった私の永年の夢は、凡人共の陳腐な常識とやらで粉々に砕かれてしまったのだ。
だからこそ私は今までの研究内容である知識、経験、発想をこの書記に全て詰め込み、遠く遥か時空を越えて出会えた、キミに託す』
僕が偶然古本屋で手に取った分厚い日記の1ページ目には、そう記されてあった。
この話の語り手である僕は、最近小学校の帰り道に古本屋へ入り浸っていた。
親しい友人がいない訳でもないのだけれど、皆が夢中になって遊ぶ野球やらテレビゲームやらはどうにも苦手だったからだ。とはいえ、苦手の理由は少し違う。
どうやら僕は他の友人と比べても、スポーツや学校の勉強といったものが、飛び抜けて出来過ぎてしまうからだ。友人同士でワイワイとやっているのに僕一人だけ一方的に勝ってしまうと、最初は楽しくてもそのうち皆の不興を買ってしまう。
結局和を乱さないために、僕はそういったものに興味を持たないようにしていた。
その点、書物はどこまでも懐が深く、まるで砂漠で乾ききった人がオアシスで水を飲むように、僕は古本屋通いに没頭するようになった。
読む物の種類は全く選ばず、小説・随筆・論文・コミック・絵本と目に入ったものは一通り全て読み漁ってきた。
そんなある日、いつもの本屋のある一角で、古書の薫り漂う書棚の中に、一冊だけ新品同然に輝く本を見つけたのだった。
これは、僕が何故、とあるネコ型ロボットを造ったのかという理由と、完成に至るまでの試行錯誤を繰り返した日々を、後に振り返る為の手記である。
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