歴詩4 醍醐の花見

 you tubeで、フォト音(on)ポエムとしての紹介は次のURLです。

 http://www.youtube.com/watch?v=98svPisSQZ4


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『醍醐の花見』


 美々びびしく 今を盛りに

 絢爛けんらん豪華に 夢見草



 伏見の城より 打ちいでて

 笠取山かさとりやまの ふもとある


 桜雲おううん漂う 醍醐の寺へ

 けふ このひとときの 桜狩り


 千三百の女房たち 艶やかに花衣はなごろも

 愛でろや 豊祝とよほけや 桜人さくらびと


 還暦を 超えてしもうた 我が身にも

 ひらひらと 花は舞う



 中村郷で生を受け

 日吉丸は十五で 家を飛び出した


 十八の猿は 親方様に拾われて

 草履ぞうり取りで 生き延びた


 二十四で 嫁をめと

 共に生きた幾星霜


 ねね

 辛いことも 一杯あったろう

 よくぞここまで ついて来てくれた


 思い出すぞ

 湖北 長浜の暮らしを


 二人とも まだ若輩で

 未来に向けて 一所懸命だったのう


 だが あの頃が

 一番 おもしろき時代だったぞ



 淀殿

 無理強いしたのう


 されど 欲しかったのじゃ

 親方様の姪っ子 茶々姫が


 勝家と お市の方の 北の庄

 燃え盛る 城から 下りてきたのう


 涙を堪えた 浅井三姉妹


 許せ

 むごいことを してしもうた



 秀頼

 よくぞこの世に 生まれてきてくれた


 生きてくれ 血をつないでくれ 豊臣の


 ねねと淀とで 手にした天下

 秀頼 強くなれ 賢くなれ

 天下は すべて おまえの手に


 ねねと淀

 しかと頼んだぞ 秀頼のこと

 立派な天下人に してやってくれ



 醍醐の里に

 桜舞う 華やかに


 いな 飛花落葉ひからくよう

 人は花 散りゆくものぞ



 さあさあ 桜人

 けふ このひとときを

 愛でろや 豊祝けや

 桜花爛漫に


 されど今

 秀頼のことのみぞ 気に掛かる



 ああ

 露とおち


 露と消えにし わが身かな


 難波のことも 夢のまた夢




少々の解説を


 秀吉は亡くなる半年前に、醍醐寺で一世一代の桜蘭園遊会を開催しました。

 その時、秀吉の胸に去来したものは何なのか、それを詩にしてみました。


 時は慶長三年三月十五日(1598年4月20日)、朝鮮出兵が泥沼化していました。

 そんな折、61歳と老いた天下人、豊臣秀吉は豊臣秀頼、北政所(51歳)、淀殿(29歳)らの近親者、そして側室の松の丸殿、信長の六女の三の丸殿、前田利家の三女の加賀殿(摩阿姫)、他に利家正室まつ、女房衆千三百人を引き連れて盛大に醍醐の花見を催しました。


 三度の衣替えで着飾った女房衆、仮装行列があったりで、それはそれは華やかなものだったそうです。

 しかし、ちょっとした揉め事が起こりました。

 宴もたけなわ、秀吉の杯を受けるのですが、もちろん一番は古女房の北政所(ねね)、これには誰も文句を言えません。そして、秀吉は二番手として淀殿(茶々)に杯を渡そうとしました。


 しかし、これに松の丸殿から「待った! 私が二番手よ」と声が上がったのです。

 松の丸殿は武田元明の正室、京極龍子です。淀殿は秀頼の母ではありましたが、当時の家の格からすれば京極家の方が上。

 秀吉の面前で、一触即発の女の戦いが……。年老いた秀吉はただオロオロとするばかり。


 そこに「あなたたち、いい加減にしなさい」と割って入ったのが前田利家の妻、まつでした。

 こんな成り行きを若い摩阿姫(26歳)は冷ややかに見ていました。そして、詠った歌は……。


 あかず見む 幾春ごとに 咲きそふる 深雪の山の 花のさかりを


 この歌の裏の意味は

「もうやってられないわ、私帰りたい。また違う誰かと、そう、好きな男と醍醐の花見に出直して来るからね」ということだそうです。


 その証拠に、摩阿姫はこの花見の後に、すぐに側室を辞意してしまったのです。

 秀吉、天下は取ったが、どうも女性には手こずっていたようです。


 こんなエピソードもあった醍醐の花見、秀吉は桜花爛漫、花舞う下で何を思ったのでしょうか?

 それはこんなことではなかったろうかと、詩にしてみました。


 また、紹介にと「You Tube」にUPしてみました。

 URLは次です。


 http://www.youtube.com/watch?v=98svPisSQZ4

 ご参考に。


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