思い込み

「思い込みは時には絶大な影響力を持つのです。」


ここは精神科の病棟。連日、ひっきりなしに患者がやってくる。


「あなたの症状からするに、自分が周囲から見られていると言う思い込みが、本当に見られているかのような感覚を生み出しているのです。」


この病棟にやってくるのは普通の精神病にかかった患者ではない。


「まずは自分の心を落ち着かせる練習から始めて、経過を観察しましょうか。」


自分の思い込みによって現実に影響が出てしまった人々、それがこの病院での患者である。


「それではまた来週来てください。お大事に。次の方どうぞ・・・。」


こうして会話による治療が延々と続けられている。



「先生、彼の様子はいかがですか?」

「まだまだ回復の兆しは見えてませんね。」

「そうですか・・・。しかし思い込みが消えれば元に戻るんですよね?」

「その通りです。しかし彼自身が言うように思い込みは大きな力となります。正直言って、いつ治るかは全くわからない状況です。」

「しかしまた何故、自分のことを治療している精神科医などと思い込んでいるのでしょうか。」

「それは分かりませんが、治るまで気長に待つしかありませんね。」


彼の治療はしばらく終わらないであろう。

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