建前と本音

Aは奇妙な言動を繰り返していた。幼稚園の頃、ある事件の中で友達の嘘を指摘し、解決に導いた。母親が良くやったわねと褒めると、

「なぜそう言うの?」

と言い返した。小学生の頃、担任の先生の不倫を暴いた。警察が良くやったと言うと、

「どうしてそう思うの?」

と言い返した。


そのような事が続いたあとAは大学へ進学した。そこでは変わり者のAはかなり浮いてしまった。クラスの代表格の男が

「IQが20以上離れた奴とは会話が出来ないと言われている。お前とまるで会話が成り立たないのはお前のIQが低すぎるんじゃないのか?」

と冗談交じりに言う。周りが笑うなか、

「・・・」

Aは沈黙を保ちつつ首をひねる。


研究室内で2人の男が話している。

「教授。あのAとかって生徒は何なんですか。気味が悪くてしょうがないです。」

「そうか、まだ君は知らなかったな。彼が研究対象であることを。」

「何の研究なんです?」

「他人の思考読み取りの研究さ。彼は人の表情や言葉のトーンだけで、その人が考えている事が分かるのだよ。IQが高すぎるせいなんだ、平凡な人と比べてな。」

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