インビジレイザー

ニューナイト

第1話 ヒロインから主人公に

 最近の異常気象、それの影響も大だと思われる9月までの残暑な気温が終わってやっと秋めいてきた10月。どこかにある都市では謎の都市伝説の話がブームになっているとか。この都市では知らない人なんていないくらいになっていた。その町在住の女子中学生達の噂によると――

「ねーえ、もし体が消えてきたなんて怖いけど自分に起きたらどうする?」

 その話にあまり興味のなかった相手の女の子はブームを知らなかったらしく、聞き返す。

「え?」


 これを知らないなんてあんたモグリよと思ったかどうか、会話を始めた子がその友達に仕方ないな~といった感じに教え始めた。

「体が徐々に消えていって最終的に透明人間になっちゃうという怪奇現象らしいの。消えてるってだけで生きてるとか!?」

 興味がほとんどないので、友達の方は懐疑的で冷めている様子だ。どうでも良さそうにまだ続きがあるなら話せばと呆れている。

「……何、それは?」

 それでもめげない女の子が非現実的なことが身近で起きたら面白そうじゃない? と共感を求めようとしていた。


「何というか都市伝説? ねぇ、体が透けるとか面白くない?」

問われた女の子の友人が、もしそうなったらを想像して考える。

「ん~~……」

 出た結論はこうだった。

「私は嫌」

 共感してくれると思っていた都市伝説など怖い話系が好きそうな女の子が理由を問いただす。

「え。なんで!?」

「だってそうなったら誰にも気付いてもらえないんでしょ?」



        ◇        ◇        ◇

 どうせ僕なんていてもいなくても変わらないんだ。引っ込み思案な小学校低学年くらいの頃の僕は、この町の結構大きな公園のベンチに座ってふさぎこんでいた。春らしい陽気で遊びやすそうな天気なんて関係ない、自分の意気地のなさに心に暗雲がかかっている気がするし。同じ年くらいの男の子達が鬼ごっこやドッチボールなどで遊んでいる。勇気を出して「一緒に遊んでいい?」と言えれば事足りるかもしれない。でも内気な僕は声をかけられず、いない存在として扱われているとずっと思ってた……


……でも

引っ込み思案の僕にお姉さんぶった女の子が声をかけてくれた。

「ちょっときみ!!」

 ふさぎ込んだ姿勢だった僕は、目を丸くして初対面では年上だと感じた女の子(後日に同学年だと分かったが)に、いちゃもんっぽい事を言われる。

「そんな所で丸まったまま、きみが仲間に入って来なかったから私がジャンケンで負けたわ!! 私に鬼なんて似合わないの!」

 勝ち気な印象の女の子に、僕は半ば強制的に命令された覚えがある。

「責任取ってきみも参加するんだよっ!!」

 その時の僕は、あの子のような明るくリードしてくれる存在を待っていたのかもしれない。救われた気持ちになったのは事実なのだ。


 僕はきみが見つけてくれて声をかけてくれたから変わろうと頑張ることが出来た。その日を境に、内気な自分を少しずつ社交的に変化させていくことが出来たんだ。あの子に直接お礼言える日が来るかな。

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