シュガーランド

食べ残したお菓子を集めて城を作ったんだ

子供の頃に夢見てたのとはちょっと違うけど

その一番奥の部屋で玩具の剣を見つけたんだ

勇者になりたかった頃に買ったあの剣だよ


砂糖まみれのベタベタの椅子に座って

それを眺める毎日さ

錆びてるくせにまだ僕の顔を映すんだ

まるであの日倒したかった魔王みたいなその顔をさ


なるべく愉快な音楽をスピーカーから流して

空を飛ぶ鳥の声をかき消すんだ

天気はなるべく寒い方がいい

熱でこの城が溶け出さないように



君を泣かせる物全てをこの世界から無くせたら

そんな下らない理由だったんだ

その果てはこんな下らない場所だったけれど



気づけば骨ばかりになった腕を見て

「好き嫌いせずに食べなさい」

って誰かの言葉の意味を今更知ったよ

後悔なんてしてないけどね


三度目の正直さ

それすら嘘だったかも知れないけれど

だから塔に登って月を見上げたんだ

虫歯になる前に眠って夢を見なきゃ



君を泣かせる物全てをこの世界から無くせたら

そんな下らない理由だったんだ

その果てはこんな下らない場所だったけれど



砂糖菓子の舟を待っている

誰かに殺されてしまう前に

偽物だとばれてしまう前に

手遅れだと知らされる前に

夜明けの日差しにこの城が溶かされてしまう前に

目が覚める前に

君が目を覚ます前に

僕らをあの日のままで連れ去ってくれる

砂糖菓子の舟を待っている

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