第3話 馬術大会
【6年後】
私は15歳になり、身体も心も女らしくなってきましたが、家畜の世話と
神殿に行く日課は今でも続いています。
ハイルフから貰った、包丁も若干縮んできたけども、それに比例して私の料理の
腕も上がってきました。
あまり知人が居ないハイルフでしたが、私の料理の腕前が、何処かで広がり
ご近所さんを呼んでパーティーをしたり、子供たちとピクニックに行ったり
初めは戸惑っていたハイルフも徐々に慣れてきたのか、笑顔を以前より
見るようになりました。
こっそり、練習していた乗馬も打ち明けましたが
元々知っていたらしく、内緒にしていた私の努力は無意味な物でした。
公認になったので、勢いで次の馬術大会に参加したいとお願いしてみると
二つ返事で了承を得ました。
馬術大会は15歳から参加する事ができ、純粋な速さを競う物と障害物を越える物
馬に乗りながら弓で的を射る物の、三つの競技があり私は、速さを競う競技に出ることにしました。
予選と本選があり、参加者の三分の二が予選で振るい落とされ
本選で1位だった者が優勝、とても判り易いルール
今年で10歳を迎えるアーニス、初参加とは思えない落ち着いた姿勢に、私も負けじと
気持ちを落ち着かせる
予選の時間になり、スタートラインについて、観客席を見ていると近所の方や子供達が
応援している、その横にハイルフの姿も見えました。
じっと此方を見ている、来てくれたんだ・・心の中で喜んでいるとスタートの合図が鳴り響き
若干スタートに手間取った物の、どんどん周りの選手を抜いて行き、無我夢中で走り抜け
気がつけばゴールの鐘が鳴っていました。
順位を確認しようと周りを見回したが、誰も居ず、後から聞かされた話では、断トツの一位
最年少でしかも女と言う事もあり、観客席からの声援はすごい物でした。
色んな人が、私に話しかけて来ましたが、内容はさっぱり覚えていません
私の中では、次の本選に気持ちが向いていて、あまり余裕が無かったからです。
本選まで少し時間があったので、アーニスと会場から少し離れた川で休憩していると
一人の男性に声を掛けられました。
『初めまして、私の名前は【ロッド・ハイス】よろしく』
顔には綺麗に整えられたヒゲを生やしていて、身に着けている物から庶民では
無いんだとすぐにわかりました。
『君の走り見させてもらったよ、軍の馬術に長けた人間も参加していたのに、あの活躍は
久しぶりに興奮したよ』
軽く会釈をした私を見てロッドはまた話始めました。
『今、軍・・いや王国では、強い女性を探しているんだ、男性と女性でどうしても分け隔ててしまう
世の中だからね、君の様な女性が国民の前に姿を出すことによって皆、希望を持てるとは思わないかい?
今の生活もあるだろうから直ぐには、返事は要らない、決心がついたら王国のロッドまで会いに来てくれ』
自分の用件を話しきると、馬に乗って会場の方へ姿を消してしまいました。
突然の事、だったので頭の整理に必死でしたが、そろそろ本選が始まる時間だったので
急いで会場に戻りました。
ギリギリに到着し、落ち着く間も無く、スタートの合図が鳴り響きました。
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