思想
久山 渡
思想
ーですから、中国と手を取り合うのはリスクマネージメントの観点から言ってもー
ああ、ウトウトしていたのか。
テレビを付けっ放しにしていた。
眠気をとろうと目をこすっていると妻が帰ってきた。
「ねえ、聞いてあなたに面白いモノを買ってきたの」
「何を買ってきたんだ?」
「すごいのよ、コレを飲むだけで頭に知りたいことが浮かんでくるの」
「どういうことだ」
「え~っとコレは飲むと勝手に頭に行って、頭とインターネットを繋いでくれるんだって」
そう言いながら私に黒い錠剤を渡してきた。
「さっきから、私の頭に欲しかったブランドのセール情報とか近くにある話題のカフェの情報とかもう次から次へと出てくるの、もう休日が待ちきれないわ」
と言い残して嬉しそうに出て行った。
それだけ聞くと夢のようなものに思えたが、なんだか私には自分が知らない間にいろいろなことを知ってしまうことで自分が自分でなくなるような気がして怖くて飲めなかった。
ピィピィと鳴き声が聞こえて我に返ると、インコがエサが無くなった皿をつついていた。
そういえば、まだエサをあげていなかったと思い、慌ててエサをあげようとしたときにエサと一緒に黒い錠剤も落ちてしまった。
拾い上げようと思ったときにはもう一緒に食べてしまっていた。
その時テレビから「日本と中国の経済的な関係はどうすればいいのでしょうか」という質問が出た。
ーですから、中国と手を取り合うのはリスクマネージメントの観点から言ってもー
と甲高い声が響いた。
思想 久山 渡 @Wataru-Hisayama
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