21.awakening

業務用搬入エレベーターが到着して、フーッと安堵の溜め息を吐いた瞬間、Σハッとボクは目が覚めた。

なんだー!?ボクはまだ、杏奈を背負ったまま、さっきの場所に立ち尽くしていた。

こんな危険な場面で意識が飛んでトランスしていたっていうのか?!

どうしよう。でも、悩んで考えている余裕などないのは判ってる。いや、ホントはよくは判らないけど、たった今視たvisionを信じるしかない。

杏奈を背負い直すと、真正面の通路を左手に曲がる。


ドドーン!

何かの爆発音がして大きく建物が揺れる。

と同時に後方で、通路の右手で、通路の正面方向で、いやフロアー内のあちこちで、物や棚が崩れたり、床が崩落したりする大轟音が鳴り響いた。

先程まで視ていたvisionは、音の無いサイレント映画みたいだったから、意外と冷静に視ていられた。

でもリアルな状況下において、胃の中にまで反響している地響きを体験してみると、めっちゃめちゃおっかなくて超絶ヤバイと思う。

ヤバイといってもカッコイイって意味じゃなくて、本当の意味でヤバイんだ。

そんなの解ってるって?あっそうだよね。

とにかく、ボクはかろうじて奇跡的に確保されている逃走経路を駆け足で走り抜けた。

奥の従業員用出入り口に飛び込むと、確かにさっき視た通り、業務用エレベーターがその先に現れた。


本当に動くだろうか?だってさっきのあの爆発は想定外だ。


上階へ上がる上矢印ボタンを恐る恐る押すと、無事にランプが点灯した。




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カタストロフィーは突然に 赤松 帝 @TO-Y

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