戦闘鬼☆おじさん

ぞうむし

第1話

「俺は超人なんじゃないか?」

「いや、「なんじゃないか?」じゃなく超人だ」

6畳一間
ブラウン管のTVの前に胡座で座る中年男 小島よしひろ


TVに映るのはボクシング ヘヴィ級統一王者 「フリオ・コッポラーノ」

よしひろ「ほー、この男が世界一強いと言われてるのか?ほーボクシングというのは腕しか使わないのか?」

よしひろはふふんと笑い
「それで世界最強とは笑わせよるな」


ー 戦闘鬼☆おじさん ー


ホテルオークランド


最上階のスウィートルーム


ソファに深く目を閉じ腰掛けるフリオ。

「おーい おーい」
その声に目を開くフリオ

バスルームの少しだけ開いた小窓からよしひろの顔。(シャイニングのジャックニコルソンみたいに)

フリオは驚く。


よしひろ「すまんな、壊すぞ」
「はーいやっ!」バキン!!
衝撃で小窓が外れ、よしひろの頭が出てきた。
ホテルの外壁にはよしひろの身体が横垂直に伸びている。

ボキボキ
肩の関節が外れ
ズルウウンと大蛇のように音もなくお湯の張られたバスタブへと入った。


チャプ、、
バスタブの水面から
剥げたよしひろの頭が出てきた。
そして顔
ザバアア
全身。

フリオは言葉を失っているが、
頭の中で
「Es peligroso (これは危険だ)」
と察し、バスローブを脱ぎ、ファイティングポーズを取った。


よしひろが目を細めるとフリオの後ろにバッファロー(のイメージ)が見える。


よしひろ「ほー、、」
「わしは全部使うぞ?」と足を指差した。

フリオの左ジャブの拳を踏み台にしてよしひろは跳んだ。
フリオの両肩を掴み
そのまま倒立した。
フリオの頭頂部に頭突きをした、
と同時によしひろの両膝がフリオの顔面に突き刺さる。

ズウウン、、
フリオとバッファローが倒れた。



よしひろ「よく鍛えてある!が、突きのみでは不完全だ」


都会
夜の街


よしひろは歩いていた。

「座敷犬」

「ひよこ」
「文鳥」
「うさぎ」

「ハムスター」

「、、ハムスター」

「すずめ」

「なんだこの街は小動物だらけじゃないか、、」
すれ違う人びとから出る動物の形をしたオーラのイメージを見てよしひろが言った。


コンビニの前
いわゆるガラの悪そうな若者
Centipede Kick Boxing Gymという同じロゴの入った黒いフードの集団がたむろしている。


よしひろは若者たちに向かって指をさし
「鶏」
「、、リス」
「小型犬、、」

「、、ドブネズミ」
と言った。

若者1「ああ!?俺らーに言ってんのか?!」

よしひろ「そうだ、それくらいの戦闘能力だということだ」

若者2「で?オレが小型犬ってか?!」

よしひろ「そうだ、よかったな!本気になった小型犬はなかなかのものだぞ」

「へえ?じゃ俺は何だい?」


若者たちに向かって歩いてくる、
男、一際体格がいい。

若者3「樺島さん!」

よしひろは無表情に
「狩猟犬だな、」
「まあ一般的な人間よりは鍛えてあるようだが、、生まれ持っての資質に頼りすぎているな」

樺島「、、、」


よしひろ「お前ならわかるだろ?オレがどれくらいのモノか、、」


樺島は少し間を置いて「、、いくぞ、」

若者たち「ええ!?」

樺島「こんな頭おかしいの相手してられっかよ」

立ち去る若者たちを見ながら
よしひろ「賢明だな」


ブ、
ブブブ、、

よしひろの横顔に一匹の巨大なスズメバチ。
「ぬおっ!!?」
驚いたよしひろはスズメバチから跳び、逃げた。

そして振り返る。
ブブブという音が何重にも重なる。

巨大なスズメバチの大群がよしひろの視野を覆い尽くす。


スズメバチの隙間から人影、
老人だ。
よく見ると足元には豹がいる。

よしひろは即座に構えた。
両手で手刀を作り、
左腕を上げ、右腕を前へ、
左を軸に一本足になった。


老人「ほう、、中国の、、百林寺拳法か、、懐かしいな、、」

よしひろ「懐かしい?、、百林寺を知っているのか、、」


老人「大東亜戦争、、」

「わしがおった陸軍(裏)独歩と国民革命軍のある一部隊が戦闘状態に入ってな、、、」

「本来なら数も武力も圧倒的に勝るうちがすぐに制圧できたはずだったが、敵に百林寺の僧侶が一人混ざっとった為に、そりゃ〜手こずったわ、、」


よしひろ「ご老人、、あんたが?」

老人「あ〜、、わしは対中国拳法人体兵器だった、、」

よしひろ「お手合わせ願おう」


老人「見たところぬしは日本人のようだが?なぜ門外不出の百林寺拳法を?」

よしひろ「記憶が、、ない、
気がついたらこの街にいた、、
覚えているのは百林寺拳法だけだ。。」

老人「闘ってどうする?」

よしひろ「今のところ「それ」しか頭の中にない」

老人「それ?」

よしひろ「百林寺の強さを示せ、と」

老人「つまらんな、、」
「大陸で百林寺と闘りあって仲間を守ってもな、
そのあとわしらの部隊は壊滅したぞ。」

よしひろは無言だ。

老人「極寒の山をな、歩いて
歩いて、ひとり、ひとり、と仲間は倒れてゆく、」

「わしは辛うじて生き延びたが、雪山、自然の力に比べて己の脆弱さを思い知ったぞ?」

よしひろは構えを崩さない。

老人「そんなことは示せないってことを教えてやることは出来る、、」

ズオアア!!
スズメバチの大群がよしひろに向かう。

よしひろはスズメバチを一匹一匹撃ち落とす。

老人はポケットからタバコ(わかば= 隙間にライターが入っている。)を出し、よしひろに向かって投げた。

タバコはよしひろの取りやすそうな場所へ、
それを取ろうとすると、軌道が変わった。
パシッ!

「あっが!」
腰の下くらいの高さ、大きく右に逸れたタバコを握ったよしひろは軸足を変な角度に捻った。
そのまま、膝から崩れる。


老人「な?」
「こんな簡単な事で人間は壊れる。」

ヒュン!
という音、
老人の(薄い手袋をした)手刀がよしひろを襲う。

パァン!!
老人の手を払うと霧のようなものが出た。

よしひろ「ゴッホ!」,

老人「毒手、みたいなもんだ」

「きついだろ?熱が41度以上出る、キツさダルさはインフルエンザの3倍だ、、頭痛寒気は6倍だ、、」

「まあ、、開発に失敗して死に至るのは稀だが、、」

ブルブル、、
よしひろは震えている。

老人「どんなに鍛えてもこんなもんよ、、」

「横になりたいだろ?」

よしひろ「う、、ううん、、」


古い木造アパート
よしひろの部屋

よしひろ「はあ、はあ、こんなに横になりたいと思うなんて、、」

「く、薬、、
薬の場所すら覚えてない、、」

布団に入るよしひろ
「さ、寒い、痛い、、」

「く、、これが治れば、、あの爺さん生かしては、、」

カラカラ、、
台所の窓が開いた。
老人の顔が見える


「治ってもな、これは免疫が付かんから次も同じ症状出るからな」

よしひろ「ええ?」

真顔の老人
「3週間症状は少しも弱まることはないからな」

よしひろ「ええ?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

戦闘鬼☆おじさん ぞうむし @zomusi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ