第9話 壁を塗る。

いよいよ最大の難関である二階の壁塗り作業の日がやってきました。ちょうど相真工務店さんが年に一度の社員旅行のため二日ほど作業がお休みということなのでこの間に壁塗りを終えてしまうことにしました。


今日のノルマは壁材剥し、下地処理、柱と梁のペンキ塗りです。10時に集合し、11時から壁材はがしに取りかります。


道具や材料などは前回の押入れのリフォームで使ったもものにくわえ、必要なものを事前に購入しておきました。


さて素人による本格的なリフォームの開始です。はたして無事にこのノルマを達成することができるのでしょうか?


(1)


まずは壁に付着した壁材をはがします。水をふくませると糊が溶けてはがれやすくなるほかに壁材が空気中に舞うのを防げます。最初は霧吹きを使ってましたが面積が面積などで効率が悪く、デッキブラシで水洗いするという荒々しい手段を使うことにしました。汚れないようポリプロピレン製の防塵服(¥498)で全身を完全ガード。こちらはアスクルで購入しました。


(2)


ひたすら壁を水浸しにすること30分。ようやく全体を湿らせることができました(同時に壁材も相当量はがれました)。この作業は当然ながら水まみれになるので床は養生シートで覆ってあります。あまり一般の家庭などではおすすめできないやりかたです。ちなみにこの防塵服、汚れを防げる優れものですが空気を通さないためじつは大変暑いです…。


(3)


壁材をはがします。道具は大きな鉄製のヘラを基本に場所によってたわしやワイヤーブラシなどを使いわけました。さほど力を入れなくともボロボロとはがれ落ちます。作業中はケガや手荒れの防止にゴム手袋や軍手などは必須です。意外に枚数を使うので100円ショップなどで購入。出費はすこしでも押さえましょう。


(4)


高いところなどは脚立を使って作業します。こうして壁材はがしは一時間ほどで終了。キレイになりました! 壁の地がむきだしです。いままでは気づきませんでしたが、すきまやヒビ、えぐれてる箇所などが結構あります。これは塗装前に補修しなくてはなりません。ビックリしたのはマスクの汚れ。真っ黒でびっくりしました。いままでこれを吸いこんでいたかと思うとゾッとします…。


(5)


下地処理です。すきまやヒビを埋めるのにはコーキング剤を充填していきます。材質はいくつかあるので用途にあわせて使いわけましょう(専用のコーキング・ガンに装着して使います)。あまり家庭では使うことのないものですがホームセンターなどで安価で購入できます。思った以上にすきまが多いですね……。白い部分がコーキング剤を充填したところです。


(6)


コーキング剤では埋められない大きな穴などにはセメントを使用しました。木っ端などで穴を埋め、セメントを流しこみます。セメントは家庭用セメントを購入。少量で速乾性のあるものが使いやすくて便利でした。セメントは水に溶かして使います。はじめての左官工事ですがうまくできているでしょうか? ここまでで午前中の作業は終了。休憩を取らないとケガのもとになるのでしっかり休みましょう。


(7)


午後から作業再開。まずはマスキング。柱と梁を黒く塗るので、黒で塗りたくない箇所のみ覆います。押入れの塗装で経験ずみなので慣れたもの……と思いきや、まさかのトラブル。用意していた養生テープを使い切ってしまいました……。考えていた以上に面積が広かったようです。工具や材料はあらかじめしっかり確認しておきましょう。作業を中断して買い出しに行くのは妙にテンションが下がるのです…。


(8)


マスキングが終わったら再度、防塵服に着替えてペンキ塗りです。マスキングをしていない箇所も多いですが、これは後日に壁を白く塗ってしまうので、多少はみだしてもOKとの判断でそうしました。本当は黒が透けてしまう危険性があるのでおすすめできないのですが、なんとかなるでしょう!


(9)


18時過ぎ、塗装が無事終わりました。まだ見違える……ほどでないですがだいぶキレイになりつつあります。明日は壁に白を塗って仕上げます。この日はこれにて作業終了! 予想以上にサクサク進みました。達成感と疲労感で思わず夜の街に繰り出したくなりますが、そうするにはあまりに全身が汚れていたのでした…。


(10)


翌日です。昨日同様に10時に集合し、まず黒で塗った柱と梁をマスキングします。今日は壁の塗装のため、念入りに床の養生も。昼食ののち、午後からはいよいよ壁のペンキ塗りです。「昨日の調子だと夕方には終わるんじゃない?」。このときわたしたちはこれからの作業がどれだけ過酷なものかを知らずにいたのでした…。


(11)


いよいよ壁塗りです。壁に漆喰(消石灰)を上塗りしてから塗装する方法もありますが、試し塗りをしてみた様子から直に塗装してしまうことにしました。塗壁には水性塗料の白を使用。まず、ギジュツ部が水で薄めたペンキを試し塗りをしながらちょうどいい案配を探ります。壁はローラーで塗るため、ローラーが届きそうにない縁の部分を最初にハケで塗ります。マスキングは大丈夫でしょうか? どうか染みませんように…。


(12)


ローラーで壁を塗り始めました。なかなか順調に進んでいるようですが……じつはこれが超重労働! コンクリートで塗られた壁は小さな凹凸があり、この凹箇所にペンキが入っていかないのです。ペンキを薄めてしまえば凹箇所にも入りますが、そうすると壁の地が透けてしまいます。検討の末、ペンキは濃いめに調合し、渾身の力をこめてローラーを壁に押しつけながら作業するのがベストと判断。これが筋肉痛必至の作業で…。


(13)


いっこうに終わる気配のない二部屋分の塗装に心が折れそうになることしばしば。結局、7時間近くかかってようやく塗装終了。写真を撮る余裕さえないほどの過酷な作業に腕はもちろんのこと、すでに全身が悲鳴を上げています。ちなみに白く塗られていない部分(押入れ跡)は後日、板が貼られるため未塗装に。塗装を終えた部屋を眺めるその姿はもはや業者の方のようですらあります(姿のみですが)。なにはともあれなんとか終わりました!


こうして二日間にわたる二階の塗装作業が終わりました。予想以上の重労働でした。


近年のリフォームで壁をペンキで塗装することはあまりなく、ほとんどがクロス(壁紙)を貼って仕上げるため自分たちでリフォームしてもここまで過酷ではないと思われます。


ではなぜペンキで塗装しようと思ったかといえば


1)塗装のほうが簡単(な気がしたから)

2)塗装のほうがコストが安くおさえられそう(な気がしたから)


という素人の勘違いもありますが「ペンキを厚塗りした壁にしたかったから」というどうしようもなく単純な理由からだったりもします。


実際は手間やコスト面ではクロスを貼って仕上げたほうが良かったのでしょう。仕上がりもキレイだったと思いますし、ローラーを壁に押しつけるあの重労働はせずにすみました。


でもそうせず、ペンキを塗りました。


能率や効率、仕上がりのキレイさではなく「そのほうが面白そう」と思ってしまったからなのです。


オフィスビルやマンションではなく、廃屋同然の元とうふ屋を事務所にしようと思った理由もまたしかりでした。


「そのほうが面白そう」


たったそれだけの理由にあらがうことがわたしたちにはできなかったのです。(つづく)

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