音と匂いと色と情熱

音はどうして鳴るのだろう

ぽろぽろ零れる鍵盤の雫には

不思議が隠れている


声はどうして出るのだろう

抑えきれない笑い声のさざ波は

明るい喜びから発している


鳥はどうして歌うのだろう

夜に怯える小さな宝石たちには

祝福の旋律が詰まっている


流れる流れる音の波

こころは音楽のちいさな船に乗って

星空のホールを漂い出す


静かに耳を澄ませば

音楽家には聞こえるのだろう


世界に満ちる音譜の声が

彼らにはいつも語り掛けているのだろう


わたしには聴こえない声は

ためらいながらわたしに触れて


そっとささやくような

微かな震えを伝えてくる


命の最期の震えのような

微風の生まれるときのはじめのような


それらは決して信号ではなくて

ながいながい歳月を経た土の匂いのような


生きている地球の匂い

生きているわれわれの匂いに似ていて


きっとどこかですれ違っている

彷徨う情熱たちの記憶の蓄積


もういいだろうとは決して言わない

あきらめることのない沈黙の蒼


ありふれた誰かではなくて

叶えたい夢の溢れる金色の波

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