生きものは眠る

夜になって

雨がふっている

車の列がゆっくりと流れている


道なりに走っていけば

行き合うヘッドライトは いつも眩しくて

目のとどく限りの テールランプは いつも寂しい


なにも焦ることは ないのだけれど

横切る 人たちの 足もとには

小さな 細い いぬのような とかげのような 生きものが

小ばしりで ひとの列に 遅れないように 

彼らなりの 必死さで 横切る


せの高い さわると手が切れる 葉が 生い茂る

だれもが 忘れた のはらには

なん台かの 忘れられた 車が 止まっていて

その車の まわりだけは ぽっかりと 何も 生えていない


夜の町から のはらに かえって来た

小さな 生きものたちは 車の したへ もぐって

今日いちにちの けしきや かぜや ひかりや

そんな 思いを 溜め込んで いて

そんな ものを すこしだけ食べて 小さく丸まって 眠る


生きものたちは 夜の夢を 見ることができない

今日と 目ざめる朝の むねの痛みだけが

おきているままの 痛みだけが

彼らの ほんとうであって

昨日へと 続いている 記憶の 限りの 後ろ姿たちが

彼らだけの 夢で あって


生きものたちは

そのすきまに ある 眠りを

恐れて 嫌がって ぎゅっと 身体を縮めて 必死で 耐えて

眠って いる

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