手つかずの言葉の列/ 憧れの白/

手つかずの言葉の列/


暖かな家を出て

黒く凍てついた森に入る


しばらく彷徨い

遂に

未踏の雪原に出会う


喜々として

そっと確かな足取りで歩めば

一歩一歩の足跡は

生まれたての言葉となり


振り返ると

神々しい雪原に残してきた

まだ埋まらない足跡の列は

一片の詩になっている


やがて

綿雪が降り積もり

私の足跡などは

すっかりと埋まって


生まれ変わった

夢のように柔らかな

雪原を


野の獣の一匹が

時に止まりながらも

純白の無垢のままで

走り去っていけば


知らず

自ずからの形を残し

誰にも読まれることのない

唯一つの純粋な

言葉の列を

残していくだろう




憧れの白/



これは簡単なようで

とても高度な技巧で書かれている


これの作り手を探しても

まるで誰も見当たらない


まったくの

無色透明であり


並べられた言葉たちは

積もったばかりの

新雪のように手つかずでいる


空白からは

私を介して

意味が

湧いて溢れて零れていく


これは何だ

これは詩だ

これが真実の空白の詩だ


これが求めて止まない

憧れの白だ

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