今日の終わり

今日の終わりに

夕陽がこちらを向いている


眩しい薄黄色の光線に

若さが輝いている


朝に降っていた雨は

もうずいぶん

乾いてしまって


まだ濡れているのは

影のところばかり




われ先に急ぐ

我がままな車たちは


思いがけず

美しい列を見せる


麗しい人の輪郭のような

テールランプの赤い列


降り出した雨粒が

やわらかく車窓に落ちる




湿り気のある闇が

夜を進めていく




帰り着くと

子どもは眠っていた


柔らかな頬に浮かぶ

他愛のない無邪気さ


閉じた睫毛の先に

幸せの光が灯る


日常の喜びは

かけがえのない今日にある




何気無く淹れた

薄緑のお茶の


穏やかな湯気に薫る

わたしたちの毎日は


美しい水辺のように

何も隠れない訳ではないけれど


棄ててしまわなければならないほどに

どうしようもなくはない




寄せては引く波のような

哀しみからも目を背けずに


薄倖の詩人の詩のように

素直に

真っ直ぐに

時に鋭く


今の瞬間を

見つめるなら


いつも闇に蹲っている

遠ざからない昨日さえ

明日の糧となるだろう

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る