「三十年後の町」「n音年後」「音遅れ」

「三十年後の町」






遅れてる

三十年も遅れてる

待ちのまま遅れてる

町はそのまま進んでる

待って帰って来るのを待ってる


町の景色の

三十年

元に還れば

帰ってきますか










「n音年後」






ねえって

呼びかけてくれるけど

ずっとずっと離れてるんだ

夜と朝と田舎と都会とあの日と明日と


きっと

いまきこえたこの声って

シリウスの光だって、8光年位前の光だって

そんなことだろ

ずっとずっと何年も前の n音年前の声なんだって


また僕だけ

ずっとずっと遅れてるから

ただただ明日の明日の明日だって、

もうもう昨日の昨日の昨日の

それでも追い付かないあの日までだって

まだ待ってるから


夜と夜の間の一番静かなところで

誰にも見えない音が聞こえると思って

時間遅れの僕だけが耳を澄ますために起きている











「音遅れ」






あなたの時間は時速1700キロぐらいです。

わたしの声は時速1500キロぐらいです。

だから、わたしの声はあなたに届かないのです。


いまあなたが新幹線に乗って発車する。

わたしはホームに残って、

声を限りにあなたを呼ぶ。


でも、

時速200キロで、

あなたは先へ行き、

わたしの声は置いて行かれる。


そのようなことです。





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