from TABLET

𝚊𝚒𝚗𝚊

father

 ひとつだけ。父親との良い思い出がある。小学校、何年生の時かは思い出せないけれど、台風が直撃して雨戸を閉ざして眠っていた。父親に明け方起こされた。雨も風も止んでいた。「台風の目に入った」父親は私たち姉妹に言った。パジャマのまま、もう明るくなっていた生温い外に出た。隣の空き地から線路越しに見渡す西の空に、まるで虹のアーチのような空が淡い銀色に光っていた。分厚い雲に縁取られた巨大な分度器のような空。

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