バベルの塔
「ボク達からは見えない中央の部屋の壁の向こう側には螺旋構造の階段があり、“彼ら”は自由に上下階を昇降して、ボクらを見張っているんだ。だからボクはこの建物を“螺旋の塔”と呼んでいるんだけど、双子達によれば正しくは“パノプティコン(一望監視塔)”とか言うらしい。」
エリックはそら恐ろしい話しを打ち明け始めた。
「パノプティコン?なあにそれ?初めて聴いたわ。」
なにしろ私にとっては初めてのことばかりなのだから、驚くよりほかない。
「パノプティコンは、元々は囚人を監視するために考案されたシステムだそうだ。」
「囚人を?まあ嫌ねえ。でも“彼ら”って誰のことを指してるの?」
「さぁそれはボクにもよく解らない。でもほら双子も言っていただろう?キミは迷宮の囚われ人だって。」
「うん。憶えてるわ。」
「実はキミだけじゃない。ボク達は皆、何か得体の知れない権力者の手の者によって、常に監視の目に晒されているんだ。」
「権力者ですって?考え過ぎなんじゃなくて?」
話が荒唐無稽過ぎて、私にはハリネズミが被害妄想に取り憑かれているのではないかと思われた。
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