バベルの塔

部屋に入ると、私は彼をリビングルームに通した。


「紅茶を淹れている間、テレビでも観ていてね。」

私はリモコンの電源スイッチを押した。

電源が入ると、ニュース番組が映った。


「・・・あら?変ね。」


「どうかしたの?」


「たしか今朝家を出る前にテレビを切った時は、テレビ毎朝を観ていたハズなのに・・・」


画面に映し出されていたのは、国営放送のニュース映像だった。


「ふうん。おや、素敵な坪庭だね!拝見してもいいかな?」

不意にエリックが、庭に面する窓を眺めて言った。


「どうぞ。」

私は窓を開けると、今朝私の目覚めた小さな坪庭へと誘った。


下履きを履いて、庭に出ると、エリックは窓を閉じた。


「ボクの今の態度は唐突で不自然だったかい?」


「まあ少しね。」


「多少ぎこちなくとも仕方ない。“彼ら”に視られている可能性があるからな。」


「“彼ら”って!?」

私は驚きをもって尋ねた。




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