萌ゆる町

第1話

あなたを追うのは陽炎と同じ

透明な膜を

有りもしない幻覚を信じて夢見るようなもの

泡沫なのだと肌に刻んで

恋の痛みを知ればいい

どんなに歳を重ねても人は愛に傷付くしかない

狂おしく止（とど）まれぬ感情が

まだあったのだと語り続けて

私の暮らすこの町は、行き交う人も多いけれど

誰しも愛を秘めながら、微笑みながら歩く路を知っている

あなたを追うのは陽炎と同じ

透明な腕を

穢れる事なき純心に浸して

泣いてしまえばきっといい

教えてくれたと瞼に誓って

恋は刹那と サヨナラと

今は綺麗なこの髪がやがて老て研げない頃でも

優しいあの手はあったのだよと

綺麗な飾りは降りてくるから

私の暮らすこの町は、あなたの瞳（め）からは見えない水辺にあり

足跡消えぬ歩き方、その跡からでも息吹は萌ゆる