007 包帯少女
アジトの洞窟はそこだけぽっかり
「親分、
親分、と声をかけられた少女は、薬草を摘む手を止め、若草色の眼鏡をくいと上げる。
「ノンノン。親分さん。わたくし、親分ではありませんわ」
少女は、摘んだ薬草の葉を鼻によせ、酔いしれながら立ち上がる。少女は全身、──顔まで──、あわい桜色の包帯に身を
「まあ、親分さん。手のひらで、ぐったりなさっていらっしゃるのは?」
異変に気がついて、少女はちょこんと小首をかしげる。大男の右の手のひらの上に少女の知らない少女がひとり、眠るように横たわっている。
「殴りかかってきたんでな。つい、反撃しちまった」
「まあ、親分さんが?」
「ザマあねえ。悪魔に見えちまった」
大男は、ばつが悪そうに頭を掻いた。
「手間かけてすまねえんだが、回復、たのめねえかい?」
包帯少女は
「……勇者、ですの?」
ちいさな黒タイツの男があたふた手をふって、しゅんと、ちぢこまる。
「しょ、少女の正体は不明であります……」
「Ah bon…」
包帯少女は、がっくり、いじけたようにしゃがんでしまった。大男は包帯少女の目線にあわせるように、手のひらを下げる。
「親分、──いや、スクレンタ先生ぇ。このとおりだ」
大男は、地べたにこすれるほど、頭を下げる。包帯少女はしぶしぶ顔をあげ、横たわる少女のダメージを
「……顔面、頭部、胸腹部の打撲。爪、くちびるのチアノーゼ。手足が冷たいですわね。……おそらく、臓器もボコボコですわ」
「な、なんとかならねえのかい?」
──この
「か、回復できるかい?」
「ええ、たやすくってよ。ただ、……」
包帯少女は、だれにもなにも
「ただ? ただ、なんだい?」
「……なんでもありませんわ」
包帯少女は摘んだばかりの薬草の葉を一枚もいで、やさしく
「親分さん、よろしいかしら。少女さんをわたくしのベッドに運んでくださる?」
「お安い御用だ」
大男の声に、いくぶんの元気がもどる。
「わたくしは、ラボに失礼します。クスリを調合してきますわ」
包帯少女はほほえんで、
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