アイムホーム
きのみのる
第1話
『アイムホーム』
時々夢の中にいるような
そんな錯覚を覚えるの
降りやまぬ雨も拍車をかけて
世界を白く染めてしまうから
肩をたたく水の音
髪を伝う濡れの音
この街にどんなに人がやってきても
私は言葉を交わすことなく
ただ見惚れているの
交われぬ世界を
ずっとずっと 焦がれるように
「おかえり」温めてあげよう
そうあなたが言葉をくれたら
「おかえり」なんにもなかった?
不思議な子だね
手を貸してごらん
雨の匂いがこんなにも染みついているのに
暖炉に火をくべるような
貴方の声は愛おしい
降りやまぬ雨も霧になるよと
心配しないで大丈夫だよと
膝についた土の味
踵を汚した現実の色
この街の人等に怯えてしまうけど
私の言葉を交わしてみたい
悦びを知れたら
走れるはず
ずっとずっと 焦がれていた世界で
「おかえり」もう逝くのかい?
そうあなたがキスをくれたら
「おかえり」愛も癒えるさ
一途な子だね
脱ぐってあげよう
似合うドレスはもうすでに手の届く場所にあるんだよ
「おかえり」温めてあげよう
そうあなたが言葉をくれたら
「おかえり」なんにもなかった?
不思議な子だね
手を貸してごらん
二人で逝こう
一緒に逝こう
愛しき人よ 旅立つその日
きっと虹が見えると信じて
アイムホーム きのみのる @Asmi10
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