踊り子

きのみのる

第1話

『踊り子』



手を伸ばせば

届きそうな

嵐を呼ぶ 

深く濃ゆる紫の雲に


透明になった

腕を伸ばして

願いよ 宙に届けと託して歌うの


荒れ狂う木々を味方に

一滴の雨粒も逃さぬように


傷だらけの喉の奥で

見捨てしまった弱さを悔やんで


強くありたい そう願うのは

私がまだ人である以上


愛を知りたい 本当は

誰より ずっと

人形おもちゃにされてきたのだから



感覚が無いと無視をされ

風の声も 聴こえぬ耳だと信じられたの


見詰められれば呪われるなど

現実になんて有りもしないのに


私は真面よ 哀しみ知るだけ

母のような慰みを魅せたい


傷だらけの喉の奥で

救えずにいた弱さを許せるのなら


聴こえているでしょ?塞いだりしないで

私は鏡よ 水面にはえ


泥まみれでも それでいい

誰より ずっと

この世を映して愛を蔦えたい



傷を舐めるの喉の奥で

真実が呼吸を止めない限りは


宙を仰いできっと踊れるなら

誰も私を欲しがらなくても


産まれる言葉は無垢なまま

誰より ずっと


私はこの世で生きていたい

ずっと ずっと


唄い 続けて


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

踊り子 きのみのる @Asmi10

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ