地獄火連盟《ヘルズ・バンクエット》

序章

『この門を潜る者、希望を棄てよ』

或（あ）る者は『嫉妬』の座。蛟（ヘビ）の様に狡猾で、深緑の焔に身を焦がす。

或る者は『憤怒』の座。その怒りの激しさ、逆鱗に触れられた竜が如し。

或る者は『暴食』の座。飢えた野豚の貪欲さが、塵一つ残さず喰らい尽くす。

或る者は『高慢』の座。絶対強者、獅子の頂（いただき）に到る者無し。

或る者は『色欲』の座。艶美さの中に秘めた猛毒が、蠍（さそり）の尾針の様に貫く。

或る者は『強欲』の座。狐の謀略が、獲物の四肢を絡め取る。

或る者は『怠惰』の座。惰眠を貪る驢馬（ろば）は、世の総てが事も無く。

此処（ここ）は世が地獄、〈地獄火連盟〉。

世に確変を、災禍を、革新を齎（もたら）す火鉢。

四方の壁を跨って、流布する秘密、此処に無し。

四方の壁を乗り越えて、築かれる垣根、此処に無し。

唯此処は、世に地獄を、煉獄を、そして果ての天国を待ち望み、また思い描く。

我らが友情、絆、生涯断たれる事は無し。

絶縁の希望、それもまた抱くべからず。