クジラが降ってくる日常

はつみ

2016年に書いたもの

クジラが降ってくる日常

「今日の天気は雨、北地区ではクジラが降って来るでしょう。」

朝食を食べ終えた後、天気予報を確認し家を出る。これが毎日の習慣になっている。


 彼らはある日突然空から降ってきた。当時死者の数は少なかったものの、家や車は押し潰されかなりの被害が出たと言われている。しかし、蓄積されたデータから降ってくる場所が限られていることが判明した。セーフティスポットにおける都市計画が実行された結果、安全地帯を繋ぐように全国的な都市展開がなされ今までの一極集中が緩和された。また車の購買が抑えられていたことも相まって公共交通が発達し、現在では誰もがバスや電車に乗っている。


 昼食休憩に食堂に行ってみると取れたてのクジラのカツが安売りされていた。クジラ予報が発達した今、毎日のように降って来る世界最大の哺乳類の扱いは政府主導のもと円滑に処理されている。予測地のクジラが降り終えた後、新鮮な内に回収と解体作業が行われ、契約している近辺の食品施設に安く送られるのだ。


 このような現象が起こり始めた原因については、人類が絶滅近くまで追い込んだクジラの呪いや傷付いた地球からのメッセージ等と噂されたり、人間が出したスモッグに含まれる科学物質の影響とも地軸の傾きによる重力のせいとも言われるが、未だに真相ははっきりとしていない。


 どのような理由があるにせよ、環境変化というものは曖昧で理不尽なものでありそれに適応できない生物は生き残れないのだ。



 


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