第3話 異世界召喚勇者でチートでハーレムで魔王を倒す予定のモンスターバスター その2

 そして、三日経ちました。

 アリス姫と相談しつつ、魔王軍侵攻の情勢、各国情勢の情報を集めています。

『異世界から勇者を召喚』したという情報が入ったからでしょうか、魔王軍が一度少し戦線を後退させたようです。

 アリス姫はこちらの世界の常識などを一生懸命私に伝えてくれつつ、気分転換に私たちの世界のこともいろいろと聞いてきます。

 その度に世界の常識の違いにビックリされるのはなんだか新鮮な感じがします。


「そうですか…。あなたたちの世界では『学校に行って自由に恋愛することもできるのですね…。』

 アリス姫がため息をつきながらつぶやく。

 うーーむ、王政の世界では特に王族が自由に恋愛とかできるわけがないのだよね…。

 国内外の有力な政治勢力や『異世界の勇者』と結婚させられた前例まであるらしい。

 そして、それを知った会長とチャラ男君は一生懸命アリス姫にアプローチを掛けてくるのですが、『瀬利亜様に勝てるようになられたら、またおっしゃってください。』とスルーされてしまっている。


 はい、みんなの戦闘力を見るということで、いろんな騎士さんや三人が模擬戦をしたのですよ。その時に『ど素人』の二人を習った武術で素手であしらったので、現時点では私の方が『勇者達より少し強い』という評価になってアリス姫の信頼がさらにアップしました。


 それでも『体内の気を上手に活用して身体能力を大きく上げた』二人の勇者たちは城の騎士の精鋭たちに善戦を繰り返したので、とりあえず、勇者の評価が大きく下がることはなかったですが。

 ただ、姫にアプローチを掛けるのが非常に難しくなったので、二人とも私を『親の仇でも見るような目』で見ているようです。

 あの、お二人さん?二人とも、特にチャラ男君は何人もの侍女たちに手を出されてますよね?

 いくら王様の差し金で『勇者を籠絡しよう』という策とは言え、こっそり何人ものきれいな侍女をはべらせてデヘデヘしている人たちにアリス姫がなびくとでも本気で思っておられるのでしょうか?

 チャラ男君はまだしも、会長も副会長のことはきれいさっぱり忘れて『侍女たちとのお時間』を思い切り楽しまれているようです。

 あのう…いくら十代後半の若い男性がいろいろあるとはいえ、彼女を巡って『決闘』した当日の夜からハメを外しまくりとかさすがにどうかと思うんですが…。

 侍女たちはお二人が好きなのではなく、お二人の『称号が好き』(愛人さんが『社長さんの財布が好き』なのと同じです。)に過ぎないことに早く気づかれることを祈ります。 


 え?私にですか?もちろん、取り込もうとして美男の貴族らしき人達が声を掛けてきてくれました。顔はイケメンですが、下心満載なのが見え見えなので、『今は魔王軍とのことに集中したいですので、何とかした後で考えてもいいかもしれません♪』とにっこり笑ってスルーしております。チャラ男貴族たちうざい!!

 王様や宰相ほどではないですが、オーラが黒いのも見ていてうげーとなってしまいます。


 そのこともあって、王様や宰相の私を見る目は日に日に厳しくなってきていますが、アリス姫の信頼がどんどん上がっているので、むげにできなくて悔しそうです。

 うーーむ、アリス姫のことがなければ、こんな『魑魅魍魎ちみもうりょうはびこる城』はとっとと後にして、適当に『いろいろ動いた後』、元の世界からの迎えを待つ…くらいやってしまいたいところなのだよね


 そんな風に姫といろいろ話しているときに『勇者に来客』という知らせが来た。



~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~



 きれーな人だわ…。ありえんくらいきれいだわー…。

 私の周りにはかなり美男美女が多いのです。

 それも内面を含めて美男美女です。というか、目の前のアリス姫も充分すぎるくらい美女なんですけどね…。

 まあ、アリス姫は性格も込みならその女性とためを張るくらい魅力的なのですが、純粋に顔立ちが整っているという話で言えば、私が今まで見てきた美男美女の中でも一、二を争うくらいかもしれません。

 その『ハイエルフ』の魔術師は『サーヤさん』と言いました。

 なんか、『至高の魔術師』の異名を取るすごく高名な魔術師らしいです。

 そして、至高の魔術師に匹敵するくらい有名な『聖女』アリス姫が話を聞くことになりました。



 「これは、『聖女』と名高いアリス姫にお目にかかれて光栄です。魔王に対抗するために勇者を召喚されたそうですね。

 そのことで占ったところ、あなたの召喚された勇者の一人が、『魔王軍を止めて平和をもたらす』という未来が予測されたのです。」


 『至高の魔術師』に『勇者の一人が魔王軍を止める』と言われて、チャラ男君と会長が目をギラギラさせています。


 そんな会話を見守っているうちに、なんとなくですが、私にも鑑定が使えるような気がしてきました。

 そこでまず自分自身を見てみます。



石川いしかわ 瀬利亜せりあ 女  人間 17歳


レベル 高いような気がする

HP すげー! 

MP ありそうだけど、魔法は使えません。

(以下略)


おおー!!ちゃんと使えるではないですか!!


ついでなので、アリス姫とサーヤさんも見てみます。



アリス・デ・ラ・マクベイン 女  人間 17歳


レベル かなり高いです。

HP ボチボチです。 

MP さすが聖女様!ばっちりです!!


攻撃力: そこそこです。

防御力: あんまりないので魔法の加護をお願いします。

素早さ: それなりです。

知力:  知識も知恵も充分です。さすが聖女様!

精神力: もう、聖女様ったらすごいです!


聖魔術 達人級ですぜ!


【称号】

『聖女』 『ガルーダ国第一王女』『真なる癒し手』

【特記事項】

世界でも有数の癒し手にして、聖魔法の達人。



サーヤ・エレメントリー・ガイア 女  人間 170歳


レベル 相当高いです。

HP まあまあです。 

MP 技術も魔力も至高なり!!


攻撃力: 期待しないでください。

防御力: やっぱり期待しないで下さい。

素早さ: 疾風のように魔法を掛けられます!

知力:  まさに天才!!至高の魔術師すばらしい!

精神力: 精神力も至高なり!!


精霊魔術 まさに至高なり!!

理論魔術 こちらも素晴らしい!


【称号】

『至高の魔術師』 『ハイエルフの王族』『大森林の隠者』

【特記事項】

世界でも有数の精霊術師。理論魔法もかなりのもの。


うーーーーーむ…。どうしてお二人の鑑定もこんな風になるのでしょうか…。


ちょっと嫌な予感がして会長を鑑定すると…。



如月きさらぎ たけし 男  人間 17歳


レベル 低いです。

HP それなりです。 

MP もう少しがんばりましょう。

(以下略)



 この鑑定能力絶対に『劣化版』だよ!!



 おや、そろそろお二人の会話が終わったようです


 会長とチャラ男君が期待する中、サーヤさんは私に歩み寄って言いました。


 「勇者様、お目にかかれて光栄です。」

 「すみません、私は『巻き込まれた召喚者』で、勇者ではないのですよ…。」

 「いえ、そんなはずはありません。私のビジョンの中で明らかに銀髪の凛々しい女性の姿が映っていました。あなたで間違いないです!」

 確信を持ってサーヤさんは私にひざまずかれます。

 まわりの空気は凍りつかんばかりです。

 会長とチャラ男君と、王様と宰相の視線が痛いです。もちろん華麗にスルーしますが…。


 その後の会議でアリス姫、サーヤさん、二人の勇者と私、そして、精鋭騎士数名で魔王討伐の旅に出ることが正式に決まりました。

 魔王軍は強力な魔物が多いので、軍隊で行くと被害が甚大になるだけ…なのだそうです。



~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~



 翌日、一応勇者?(サーヤさんが主張)ということなので、私自身の装備を確認してほしいということで、お城の武器庫に呼び出されました。

 いえいえ、私に武器や鎧は必要ありませんよ?

 そんなものを身に付けたら私の特性上、かえって邪魔になりますから…。

 とはいえ、出発までに城にある武器・防具を見ておくことで敵や味方の状態を知る参考になりそうなので、一応見させていただくことにします。

 城付きの技師さんがいろいろと親切に説明してくれるのですが…もちろん、さっぱりわかりません。(苦笑)

 でも、剣の達人の人とかが使ったらそれなりに使えそう…と私の『正義の直観』がささやいてくれるので、割といいものが揃っているようです。

 一応形だけでも借りていこうかな?とか思っていると、なんだか嫌な気配を感じます。

 振り向いて身構えると、いつの間にか三メートル近い背中に蝙蝠のような翼の生えた大男が立っています。顔はトカゲみたいで鹿のような角まで生えてますからいわゆる竜人、と言ったところでしょうか?

 技師さんはトンデモナイ場所への『怪物の登場』に顔が真っ青になります。


 「ほお、お前さんが至高の魔術師が認めた勇者か?悪いが成長する前に死んでもらう!」

 竜人は巨大な剣を抜くと、私に斬りかかってきた!



~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~



 私たちが旅に出発し、王都を出て森に入ってすぐに襲撃に逢いました。

 凄まじい速さと力を持つ人造兵器ゴーレムの集団と、それを操る魔術師のようです。

 魔術師は小柄な女性のようですが、サーヤさんの攻撃魔法すら弾く強力極まりない結界を張っています。

 騎士たちはあっという間に行動不能にされ、勇者のお二人は人造兵器ゴーレム達に手玉に扱われたらあっという間に逃げ出してしまいました!

 『瀬利亜さんが後から来る予定』になっていたのは裏目に出たのでしょうか?

 それとも、瀬利亜さんがこんな強敵に出くわさずに済んだことが幸いなのでしょうか?



 「『聖女』も『至高の魔術師』もまだまだだねえ。城付きの勇者は論外だし。ああ、張り合いがないねえ。至高の魔術師が認めた勇者だったらもう少し張りがあったかもしれないが…。

 とりあえず、あんたたち二人はおとなしく『捕虜』になってもらおうか。」

 魔法をほぼ使い果たして荒い息を吐いている私とサーヤさんを取り囲むようにゴーレムが動き出す。それでも抵抗しようと魔法の詠唱を私たちが始めた時、声が聞こえた。


 「うわー、こんなにたくさんの『おもちゃ』を使って何をされるおつもりかしら?魔王軍幹部のゴーレム使い、ミーシャさん!」

 そこにはブレザーという異世界の衣装を着た瀬利亜さんが立っておられました。




 「王様!大変です!セリア様が行方不明になられ、武器庫に怪物が!!」

 衛兵の報告を受け、国王と宰相はさも驚いたような表情をした後、お互いに目配せをした。

 『計画通り』に事態は進行しているようだ。


 「落ち着け!まずは詳しい状況を話せ!」

 「はい!セリア様は行方不明。そして、竜人と思しき怪物が…武器庫の壁にめり込んでます!!」

 「「はっ???!!!」」

 想像の斜め上をいく事態に二人は固まっていた。




 瀬利亜さんが懐から木の実の様なものをいくつか取り出されると周りに投げつけられました。

 大量の煙が出てきて、周りの視界が奪われます。

 「アリス姫!サーヤさん、今のうちに撤退を!」


 私が防御結界を張り直し、サーヤさんが飛行魔法を私とサーヤさん自身に掛けます。

 そして、二人で宙に浮かんでそのまま後方へ飛んでこの場を脱出にかかります。


 はっ!瀬利亜さんの後方からものすごく俊敏なタイプのゴーレムが襲い掛かってきた!瀬利亜さん、危ない!

 声を掛けようとしましたが、間に合わず、瀬利亜さんはとっさに左手で払われようとしましたが、それもむなしく…え?!二メートルはあるゴーレムが吹っ飛んでいったんですが!!


 「危なかったわ!今のゴーレムは欠陥品だったようで、助かったわ!」

 …そ、そうですよね…。精鋭騎士部隊の魔法の武器による攻撃に傷一つつかない強大極まりないゴーレムを普通は手で払ったくらいで吹っ飛ばないですよね…。欠陥品だからですよね。

 ああっ!今度は左手から二体のゴーレムが連携して襲いかかってきた!!

 瀬利亜さんは…左回し蹴りで、二体とも吹っ飛ばされたのですが…。


 「私ってなんて運がいいのかしら!今度は欠陥品が二体も続くとは!これも頑張る乙女を神様が応援してくれているからに違いないわ!!」

 ……ソウデスヨネ…。普通の女の子が素手でゴーレムを連続して退けるなんて…これ、『絶対に夢』ですよね???!!!


 「ふざけるな!!魔王軍随一のゴーレムマスターの私が一体たりとも欠陥品のゴーレムなんぞ使うわけがないだろう!貴様は一体何者だ!」

 瀬利亜さんの様子を愕然と見やりながら、ゴーレム使いは必死でゴーレムを集めていた。

 そして、集まったゴーレムは一〇メートル近い巨大な一体のゴーレムになっていた。

 「…通りすがりのただの『がんばる乙女』だわ!!」

 「そんなわけがないだろ!!はう!!」

 …えーと、瀬利亜さんがゴーレム使いの注意を思い切り引きつけてくれている間にサーヤさんが巨大なハンマーで相手を殴る魔法『百トンハンマー』で殴りつけてくれました。

 ゴーレムマスターは気を失い、巨大ゴーレムは……。



~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~



 私は頭のずきずきする痛みで目を覚ました。


 残念ながら縛られてしまっているようだ。

 「どうやら気が付いたようね。いろいろと教えていただけるとありがたいんだけど」

 セリアという女がにっこり笑っている。

 「悪いが、殺されても何も言う気はないね。」

 こう見えても魔王軍幹部だ。敵の脅しに口を割っていては名折れになる。

 それに…停止してしまったゴーレムを起動させれば……ゴーレムに魔力を通そうとして、違和感を覚える。ゴーレム達を合体させた『鬼人兵』が反応をしないのだ。

 ちらと鬼人兵を見やると、弱点である胸部に穴というか、手形が深くめり込んでおり、完全に機能停止しているようだ…。


 「ふ、ゴーレムはなぜかわからないけど、機能不全を起こしたみたいだわ。あれを頼ろうとしても無駄だわ。」

 「いや、はっきり手形が残っているだろ!!あれをやったのはおまえだろ!!」


 『聖女』と『魔術師』は青い顔をしており、勇者は…ゴーレム胸部のミスリル金属を粘土のように寄せて手形の跡をごまかそうとしてるんだけど?!! 

 あの徹底的に強化された胸部装甲に手形をつけるだけでも人間技でないのに、粘土のように寄せて穴をふさぐとかあんた何者ですか?!!

 心の中で突っ込んだ私は気付いた。こいつは明らかに魔王を上回る怪物だ。その気になればおそらく一人で魔族の国を滅ぼすこともできるだろう。


 「ほら、ばっちり♪」

 「いやいや、穴をふさいでドヤ顔されてもどう反応しろと?!!」

 そんなことを言っている場合じゃなかった。この勇者は少しは話が通じる可能性がある。なんとしても魔族の国を滅ぼすわけにはいかない!


 「どうやら、私の完全な負けのようだ。だから、頼みがある。私はどうなっても構わないから、魔族の国を滅ぼさないでくれ!せめて、女子供だけでも助けてくれ!」


 「それは、あなたからの『正式な依頼』ということでよろしいかしら?」

 「え?話を聞いてくれるのか?」

 「現時点で私はアリス姫とサーヤさんから『魔王軍の侵攻を止めてほしい』という正式な依頼を受けているわ。そしてあなたの今回の依頼『魔族の国を滅ぼさないよう手を尽くす』と相反しないように依頼を受けることは可能だわね。」


 そしてセリアは懐から一枚の小さな紙を取り出して、私と聖女、魔術師の前に差し出した。そこにはなぜか私たちの言葉で字がいろいろと書き込まれていた。

 「私は元の世界では『超常トラブルを解決する』モンスターバスターの仕事をしていました。

 今回のような利害の対立する組織同士の講和を仲介することも任務の一つです。異世界とはいえ、おそらく任務の範囲に入るでしょう。

 私はA級モンスターバスター石川瀬利亜。今回の『魔王軍と他の国の戦争を講和に持ち込む依頼』確かに引き受けました。」

 私、聖女、魔術師はにっこり笑って宣言する瀬利亜の顔と一枚の紙をしばし、呆然と眺めていた。


「さまざまな『超常トラブル』解決にお気軽にお問い合わせください♪

A級モンスターバスター石川瀬利亜 事務所 東京都◎◎区XXXX 携帯:090(◎◎XX)◎◎△△ アドレス SeadoragonMask@docomo.ne.jp」

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