第15話 最後の捜査

犯人がどんな暴挙に出るのかわからないので、一刻も早く謎を解かなければならない。

だが、最初の捜査のときと違い、今は犯人の目星はついている。どうも怪しい行動や発言をしている人物がいるのだ。それら一つ一つは小さなことでも、積み重なっていけば怪しくなってくる。その怪しい行動をどう事件の謎につなげていくかは私次第だ。必ず解いてみせる。

まずは、館の二階を探索しよう。

男性三人が泊まっていた部屋以外は、全て空き部屋で鍵はかかっていない。つまり、私が先程推理した部屋に戻ったと見せかけてどこかの部屋に留まり会話を聞いていた、ということは不可能ではない。

次に、高山さんの部屋に行ってみた。未だに高山さんは見つかっていない。まだ生きているのか、それとももう殺されているのかはわからないが、もしかしたら部屋に何か手がかりが残っているかもしれない。

しかし、探しては見たものの何も見つからなかった。

高山さんがいなくなってからかなり時間が経っているので、犯人が証拠隠滅してしまった可能性が高い。もっと早く来るべきだった。

私は桑原さんの部屋に入った。ここで、あの密室殺人の謎を今解かなければならないのだ。


「……」


私は密室殺人が起こったときの一連の流れを思い出していた。

集合時間を過ぎても桑原さんは一向に来る気配がなかったので、私たちは全員で様子を見に行くことにした。桑原さんの部屋の前まで行き、ドアを叩いて呼んでみたが返事はなかったので中に入ろうとするが、鍵がかかっていた。それから何度も呼びかけては見るものの、やはり返事がないので、隣の部屋からベランダをつたって窓から入ることにした。窓には鍵がかかっていたので、近くにあった植木鉢で窓を割り、中に入った。中には、すでに息絶えていた桑原さんの姿があった。殺人が起きたことを外にいる二人に伝えようとドアから外に出ようとしたときに、毒が塗ってあることに気づいた。仕方がないので、来た道を戻り、廊下にいた二人に状況を説明した。

これが、一連の流れだ。

あのとき部屋の中には、私と桶川さんと内田さんの三人がいた。阿部さんと横山さんは二人で外からドアを叩いていた。そして、死体発見時には部屋の鍵はしっかりかかっていた。これは自分の目で確認した。

クローゼットや箪笥の中に人がいたとは考えられない。もし中に人が入っていたならば、蜘蛛の巣が張っているわけがなく、また、服も埃まみれになってしまうだろう。 

ということは、やはり何らかの仕掛けがあったと考えるのが妥当か。


「……待って、もしかしたら……」


唐突に、私の中にある考えがひらめいた。

私は一旦外に出て、ドアを閉めた。

次に、ドアノブをガチャガチャと回しながら、ドアを叩いた。


「……そうか、この方法なら……!」


あの人物の行動、部屋に鍵がかかっていた理由、なぜ毒がドアノブに塗られていたのか……。


「これで、密室の謎は解けた……!」


殺人の謎は解けた。

だが、もう捜査する時間はない。


「まだ完璧ではないけど……、でも、もう時間がない。後は……、私の話術で何とかするしか……」


いよいよ、犯人を追いつめる時が来た。

私は不安を抱えながら、皆が待つ一階の客室前の廊下まで向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る