第7話 館探索 1

「ふう……」


部屋に荷物を置いた後、私は一息ついた。

あの山道を歩き回ったので、心身ともに疲れ果てていた。

ようやく一息つくことができたのだ。


「携帯は……圏外か」


先生に連絡をしようと思ったが、できない。しょうがない。怒られるだろうが、事後報告をするしかない。


「さて、どうしようかな」


疲れたのでこのまま横になるのも悪くないが、いろいろと気になることがある。

その他にも、ここにいる人たち全員と話して情報収集するという手もある。探偵として個人で動くことは初めてなので、今のうちに慣れておきたいのだ。


「まずは、この部屋のことを調べようかな」


私はドアの鍵を閉め、しっかり機能するか確かめた。

うん。鍵はちゃんと閉まる。

次に窓も自由に開閉できるかの確認だ。こちらも問題ない。窓にはカーテンもかかっている。ボロボロだが日差し除けくらいにはなるだろう。

その次は部屋にあるクローゼットや箪笥などの中身の確認だ。特に何も入っていなかったが、蜘蛛の巣が張っていた。まだ新しい。


「……」


ベッドの下も覗いてみたが、特に何もなかった。


「とりあえずこんなものでいいかな」


次は何をしようか。


「そういえば、この館の見取り図があるって言ってたな」


阿部さんの話だと、廊下に見取り図があるらしい。この館の全貌をあらかじめ知っておいた方が何かと便利だろう。




私は廊下をうろつき、見取り図がある場所を探した。

ほどなくして見つかった。古ぼけているが、破れていたり汚れている場所はないので、私はメモを取り出し書き写した。


「それと、写真もとっとこ」


二枚ほど撮り、私は見取り図に注目した。

客室が多いこと以外は普通の館と変わりはない。ただ、一つだけ気になる場所があった。


「メモリアルルーム?」


何故こんなものがあるのだろうか。

メモリアルという言葉には、二通りの意味がある。

一つは記念という意味だ。

もしこの意味の部屋だったら、この館が建った当時の記念品などが飾られているのだろう。

そして、もうひとつの意味は、追悼。もしこの意味の部屋だったら……。

とにかく気になったので、行ってみることにした。




メモリアルルームの入り口に着いた私は、その異様な雰囲気に圧倒されていた。

ただの観音扉のはずなのに、なぜか威圧感がある。この中に一体何があるのだろうか。

さっそく中に入ろうと扉を開けようとした。

だが、


「……鍵がかかってる」


この館の鍵が機能することは先程確かめた。部屋に鍵がかけられるということは、この館のどこかにマスターキーがあるはずだ。


「錆びてて使えないってことがないといいけど」


何にせよ、今の時点ではこの部屋に入ることはできない。見取り図を見たが、メモリアルルームには窓がついていないので、外から入ることはできない。扉は一つしかないので、ここが開かないのなら中に入れないだろう。

仕方がないので、部屋に戻ることにした。

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