第9話幼龍皇 白

ピキ ピキピキ!


一緒に旅に出ることになった蒼太とシャルティは、今後の事について話していた。


ピキピキ

最初に気付いたのは、蒼太だった。「なあ、なんか音がしないか?卵が割れるような音が。」蒼太にそう言われて、シャルティも音がしていることに気付いた。

「どこから音がしているのかしら?」蒼太とシャルティは音の出る元を探すため、だだっ広い空間を手分けして探すことにした。

「オーイ!あったぞー!多分これだー。」蒼太の声を聞いてシャルティが蒼太の元に向かっていくと、そこには今もヒビが入り続けている不自然な壁があった。

「なにかがいるのか?」蒼太はひび割れが魔物のせいだということがわかったらしく警戒体勢をとっている。


ピキ


ピキピキ


ピキピキピキ!


蒼太達が見ていると壁に小さな穴があきそこから鉤爪と鱗を持った大きな手が出てきた。


ピキピキピキピキ


とうとう壁が全て割れ、中からドラゴンが出てきた。そう男子中学生が妄想のなかで戦っているあのドラゴンだ。

「グリャアアァァア!!!」

ドラゴンは吼えた。

俺たちが臨戦体勢をとろうとすると、メフィアが《主様、そのように構えずとも大丈夫でございます。主様は異世界言語理解のスキルを持っておられますので、龍語にも対応させてください。そしたら、この幼龍皇は龍族の王となる身、力の上下関係位はわかっております。》今龍皇っていったよな。強そうな奴だな。と、とにかく異世界言語理解を龍語にも対応させたら良いんだな。

「聞こえるかー。」蒼太は今覚えたての龍語を使って幼龍皇へ話かけた。

「聞こえておりますとも。全統神様に逆らう気はありません。それと、その旅と言うものに私も連れて行って貰えないでしょうか?」蒼太の言葉に幼龍皇からと思われる返事が返ってきた。

幼龍皇は幼いといっても、体長が5メートル位あったので、蒼太は少し迷ったが、幼龍皇が可愛かったので連れて行ってもいいかなと思い始めていた。そういえば、鑑定してなかったな。

ファフニール レベル150

HP;35896

MP;25639

攻撃力;45096

防御力;21423

素早さ;58096

魔攻撃;45321

<スキル>

・龍魔法Lv.Max

・龍族の契約

<恒久スキル>

・龍皇の血統

・飛翔能力超向上


強いな!てかレベル150って、こいつやっぱり

強いな!

「まあ、いいぞ!一緒に旅をするか?」

「お供させていただきます。それと名前を貰いたいのですが。」名前かぁ~。どんな名前がいいかな。鱗が真っ白で綺麗だから、安直だけど白かな。

「白でいいか?」

「白、しろ、良いですね!ありがとうございます。」

さてここから出るのにいちいち出口を探すのは面倒だから、どうするか…。

そうだ俺の魔法の威力があれば天井位ぶち抜けるはずだから、天井に穴を開けてそこから飛行能力のある白に乗って出るのが一番いいかな。「よし、白!俺が魔法で天井をぶち破るからそこから出てくれ!」そう言って蒼太は再び莫大な魔力をため始めた。

次はどの魔法がいいかな…さっきは炎属性だったからそれ以外がいいな。おっ!?これ良いんじゃないか!これにするか!

そう言って蒼太が選択したのは《破滅級闇魔法 神滅闇槍グングニル》だった。

魔力は次々に形を成し、最終的には5メートルを大きく越える漆黒の闇を蓄えた槍の形になった。蒼太その槍を見て、「真っ黒だな。」とだけ言い、天井へ向かって投擲した。

蒼太の手から解き放たれた槍はぐんぐんスピードを増し、天井に大穴を開けて、どころではなく吹き飛ばし、そのまま空の彼方へと飛び去っていった。そして、蒼太達は白に乗って神滅闇槍の開けた大穴を通り抜け外にでることが出来ていた。そして、蒼太は白に乗っている間に鑑定をしなにかに使えそうな鉱石を次々と回収していた。

外にでることができた蒼太は白と一緒に背後にある大穴の事など全く気にも停めない様子でさっさと王都へ向かって歩き始めていた。しかしシャルティは、大穴の事が気になるようで、まだその場に留まっている。「あの穴はあのままにしておくんですか?」シャルティは蒼太に気になったのか聞いていた。

「王都のこんなすぐ近くでこれだけの爆発があったんだ。王国がそのままにしていると思うか?直ぐに城から兵隊が来るだろう、その時に俺たちが近くに居たら怪しまれるだろう?そして、これだけの力を持った人物を王国が見逃すはずがない。また奴隷に墜ちたくないだろ?だから、兵隊がいつくるかも解らないのに悠長に穴埋めなんてやってられないんだよ。」蒼太はシャルティの疑問に歩くのを止めて答えた。

シャルティは理解したのか、蒼太に追い付こうと走り始めた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「報告します!」そう言って兵士が部屋の中へ転がり込むように駆け込んできた。

「どうしたんだ!」普段は何事にも冷静なこいつがこれだけ焦っているんだ、なにかあるのだろうと思い、話を聞くことにした。

「な、なんだってーー!!」

つい声が出てしまった。しかし、こいつの言った事が本当なら、これは陛下の耳に入れておかなければならない情報だな。

「それは、本当なのか?」確認しなければならないだろう。

「本当です。確認にも行かせました。確かにトラント廃坑は確かに災害級魔法以上の魔法で破壊されました!」



5分後、王城の広く豪華な廊下を、王の部屋へと走っている王国騎士団団長゛バルトルト・アイヒベルガー゛の姿があった。


「失礼します!!」そう言って俺は王室の扉を普段ではあり得ない勢いで開けた。

我が国王様は執務室の机に向かって座っておられた。顔は驚いたようにこちらを向いていた。

「どうしたのじゃ?」王はこちらがなにか急用があるのを見破っていた。さすがだ と率直に思える王だ。

「報告します!先ほど王都近くのダンジョンであるトラント廃坑で破滅級魔法の使用が確認された模様です。」そう俺が言うと、王の顔が直ぐに切り替わった。「我が国に魔王でも出たのか!?」王の焦りはもっともだ。人族が使用できる魔法は災害級までと言われている、破滅級魔法は魔族の王であり、人族の敵である魔王のみが使うことのできる魔法と言われている。よって、今回の破滅級魔法が魔王によるものも思うのは仕方がない事かもしれない。

「いえ!今のところは魔王の存在は確認出来てはいませんが、捜索の許可を頂きたく参った次第であります。」これが王の執務室にまで乗り込んできた最大の理由だ。放って措くわけにもいかないからな。

「…許可しよう。」王は少し悩んだが、俺の欲しかった結論を出してくれた。「その時に、今回召還された勇者達を一緒に連れていけ。危ないと思ったら即刻帰還させよ。」まだレベルの低い勇者を連れて行っては危険かと思ったが絶好のレベル上げのチャンスだと思い、渋々だが了解するしかなかった。


俺たちがトラント廃坑だった場所についた時には、それなりの人がいた。

それを押し退けて見える位置まで行ったときには、絶句してしまった。トラント廃坑には何回か来たことがあり、入り口が小高い岩山の中腹にあったと思っていたが、今目の前にあるのは、陥没したクレーターのようなものだった。改めて、ここにバケモノがいるのではと思い始めたが、破滅級魔法の恐ろしさを知らない勇者達が、なんの躊躇いもなしに、クレーターは中心部に空いている入り口らしきものへ向けて歩き始めてしまっていた。

チッ!これは俺たちも行くしかないか。

「騎士団、勇者様達に続け!」

そうして、俺たちはバケモノがいるかもしれない中へと入っていった。

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