第33話
「さあ、行くぞ山城。冒険の始まりだ」
着替えたウェインさんがドアを開けて愉快そうに言い出す。
冒険といっても小学生の遠足レベルより劣る徒歩の旅だが、コンビニまで付き合うか。
とりあえずウェインさんと肩を並べて外を歩いた。
「モンスターとかは出ないんだよな。山城よ」
「出ないですよ。安心してください」
しばらくコンビニまで自然の音を聞きつつのんびりと歩く。
「静かな世界だ。モンスターもいない便利な世界…我々の憧れの世界そのものなのかもしれないな」
「そうですかね。意外と退屈でお金がないと暇する世界ですよ?」
「この世界の通貨はどんなものなのだ?」
「見たいんですか?今は1万円札が無い以外はあるのでお見せできますけど」
「是非見せてくれ」
人の少ない場所で財布の中身を出すってのもなんだかなぁ。
俺はウェインさんに財布の中身の通貨や紙幣を見せた。
「人の顔が写っているがこの国の王か?」
「いえ、違います。昔の偉い人だそうです。この人は大昔の文学者ですね」
「ふむふむ、なるほど。どれが高くてどれが安いのだ?」
「1番安いのはこの1円で1番高いのは持っていませんが1万円札ですね。順番に言うとこういう感じです」
俺は通貨や紙幣を順番に見せて価格を説明した。
「そのお金さえあれば買い物もできるのだな?」
「ええ、出来ますよ。だけどウェインさんにお金を持たせると無駄使いしそうですから渡しませんけどね」
「ぐぬぬ」
「そういえばウェインさんの世界はどうなっているんですか?仲間と冒険してるんじゃないですか?」
「冒険してはいるがこうやって山城と遊んで休憩してはいる」
「どんな人達なんですか?」
「みんななんだかんだで明るい連中さ。剣士に魔法使い、それに僧侶など色々な経歴を持った連中ばかりだ。私が女になった時は驚いていたな。だが私の女として生きていく決意を発表したらみんなもなんだかんだで納得してくれたようだ」
「そうなんですか、それより時間大丈夫なんですか?向こうの世界の人達あまり待たせるのはよくないと思いますよ」
「ここにいるうちは私のいる世界の時間は止まっているから問題はないぞ」
「なんかご都合主義ですねー」
「考えすぎると馬鹿馬鹿しいぞ。考えるだけ無駄無駄だ」
ウェインさんはそう言うとコンビニを見つけて喜びだす。
「それより今はコンビニだ。色々そろっているからな、説明してくれ山城」
「それは良いですけど何か恥ずかしいなー」
そう言いながら俺とウェインさんはコンビニに入っていった。
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