第28話

 朝起きて兵舎のドアを開けるとウェインさんが外で自主トレしていた。

 呪いで弱体化したとはいえ、ほぼ最強なのに自主トレするなんて変なウェインさんだ。

「ウェインさん、おはようございます。自主トレしなくてもいいのにご苦労様ですね」

「気持ちの問題だ山城。もし勝てない神獣が出て来たらいくら私でも生き残れないからな」

「そんなホイホイ神獣が出て来たらたまりませんよ。そろそろ朝食の時間ですし、レオンハルトさんとラーズラースさんが起きる時間ですよ」

「うむっ!そうか」

 ウェインさんが両手を上に上げて伸びをする。

 服の脇の下からブラが見えそうなので止めて欲しかった。

 俺は朝から悶々としていたが、気持ちを切り替えて兵舎に戻った。

 切り替えないと死ぬのがこの世界の掟だし、いつモンスターが来るか油断できない。

 レオンハルトさんにそう教わってからは切り替えが大事だと気がついた。

 エロブラ1つで油断して大怪我もしくは死亡なんてごめんだ。

 旅の歩行中はいつもラーズラースさんの尻を眺めている俺だが、油断はしないように心がけているつもりだ。

 モンスターが出た時はすぐに後ろに付くようにしているし、俺の槍では勝てないことはオークの襲撃の時に解っている。

 そんなすぐに成長できるわけがないのだ。

 俺は兵舎で用意されたフレンチトーストとトマトとチーズのモッツアレラピザなどが用意された机で衛兵の人達とウェインさん、レオンハルトさん、起きたばかりのラーズラースさんと一緒に食事を取った。



 旅の準備が出来て城門を出ると草原の広がるフィールドを歩いて行った。

 俺は1番後ろで戦闘はウェインさん、次がレオンハルトさん、その次がラーズラースさんといった隊列で歩いていく。

 旅の途中でワーウルフの集団に出会った。

 戦闘になるので俺は一番後ろでウェインさんの活躍を見ていた。

 いつにも増して強くて早々とワーウルフの集団を剣で倒していく。

 レオンハルトさんは出番も無いまま守りについて、ラーズラースさんは回復魔法を唱えてウェインさんに向かって魔法をかける。

 俺はボッーと立っていた。

 いつもの本当にいつもの戦闘だった。

 あたりに残党がいないことを確認するとみんなで円陣を組んで結界を張り、一休みした。

 俺…役に立ってないな。そう実感した戦闘だった。

 そしてウェインさんに薬草を異空間から取り出して渡した。

「すまない山城」

「こっちの台詞ですよ」

 俺も異空間から水を出して、それを飲んだ。

 青空と爽やかな風が草原に響いていた。

 ワーウルフの死骸も残りつつ。

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