第2話

天使「とりあえず周り見てもらったらわかると思うけど」


天使「君死んでないの」


「たしかに突風が吹いてビルから落ちたよな?」


天使「うん、たしかに落ちたよー」


天使「助けちゃった」


「た、助けちゃった!?」


天使「ついつい・・ね。テヘ」


「何が『テヘ』じゃっ!」


天使「実はこれは内緒なんだけど、僕まだ新米なんだよね」


天使「要するに・・慣れてないの!」


天使「決してドジとかそういうんじゃないの!」


「・・要するになにか?お前のドジのせいで死ねなかったと・・そういうことか?」


天使「ドジじゃないっちゅーのっ」


「もうわかった。もういい」


「もう一回落ちたらいいだけの話だということがわかった」


天使「えー?無駄だよ、命は大事にしたほうがいいよー」


「うるさいっ!俺はもう死んでしまいたかったんだ!」


天使「でも遠くからみてためらってるように見えたよ?」


天使「諦めのほうが大きかったんだろうけどまだ何とかしてほしいって感じに見えたよ」


「!!!!!」


「そんなことない!いいか!?みてろっ」


「!?」


「たしかに俺今飛び降りたよな・・」


「なんでまた同じ場所に戻ってきてるんだ?」


天使「ね?無駄って言ったでしょ?」


「どういうことだ?」


天使「君死ねない体になっちゃったんだよ」


「は?何言ってんだ?そんな訳ないだろ」


天使「いやいや、ホント。信じられない気持ちもわかるけどさ」


天使「現に今飛び降りても死ねなかったでしょ?」


「そんなわけ・・そんなわけあるかーーーっ!!」


「もう一回!もう一回飛び降りてやるっ!」


「!?」


「なんでだよっ!なんで死ねないんだよっ!」


天使「とっさの出来事だったから」


天使「僕の力を分けて助けちゃった」


天使「それで君は僕と同じように死なない体になっちゃったってわけ」


「死にたいのに・・」


「・・なんで死なせてくれないんだよ・・」


「元の体に戻してくれっ!!」


天使「僕もね、こんなこと滅多にないことだからどうしたもんかなぁとは思ってたんだ」


天使「ちょっと確認してみる」


天使「もしもし、私です。あの・・実はちょっとややこしいことになってまして・・」


(携帯?なんかこの世的な感じじゃないんだからもっとテレパシーみたいなの使えないのかよ)


天使「はい、はい。あ、もうご存知でしたか。すいません」


(そっちは携帯なしでご存知だったのかよっ)


天使「それでですね、元の体に戻せと言ってるんですが・・」


天使「はい、すいません。そうですよね?はい、はい。わかりました。すいませんでした」


天使「説明しよう!」


「えらそうに・・で、元に戻るんだろうな?」


天使「結果的には僕の上司が戻してくれる」


「結果的には?」


天使「どうも君に力を分けたことで僕の力が半減してるみたい」


「具体的に!」


天使「僕の仕事わかる?」


「わからんわっ。ってか何から何まで全部わからんわっ」


天使「そうだよね。えっとね・・僕の仕事はあらかじめ決まってはいない死を回避することなんだ」


「わかりづらい」


天使「ごめんね。君のいるこっちの世界ではすべての死はあらかじめ決まってるんだ」


「寿命ってやつか?」


天使「そうそう、病気であろうが事故であろうが死んだその時が寿命なんだ」


天使「ただね、予定にない死もけっこうあるんだ」


天使「全部受け入れてたらこっちでいう・・あの世?がすぐにいっぱいになっちゃうんだよね」


天使「だから僕みたいな仕事が必要なんだ」


「なんかイメージしづらいが・・それで?」


天使「予定にない死から救うにはね、いろんな能力が必要なんだ」


天使「例えば・・それが起ころうとしているのを察知する能力は当然必要でしょ?」


「もちろんそうだな」


天使「例えばそれが離れたところならそこにすぐに移動できる能力も必要でしょ?」


「たしかに・・」


天使「今の僕、その2つの能力しか残ってないみたいー」


「・・軽く言うなぁ」


天使「本来なら多少強引な助け方して後で記憶をなかったことにできたりするんだけど」


天使「そういうの全部なくなっちゃった笑」


(さっきからなんだ?この軽いノリは・・アホなのか?)


「じゃ、お前これからどうするんだよ?」


天使「さーそこです!」


天使「僕も上司から力を戻してもらわないとダメなんだけど・・」


「さっさとしてもらえ!それで俺の体も戻してもらってくれ!」


天使「一緒に救えってさ」


「は?」


天使「だーかーらー、説明聞いてた?」


天使「一緒に予定にない死から人間を救えってさ。そしたら戻してあげるってー」


「はぁ?なんで?」


天使「こっちの世界の人間に関与する能力がなくなったからに決まってるじゃん」


「聞いてないわっ」


天使「ま、たぶんあの上司のことだからさっさと元に戻してくれない理由はそれだけじゃないんだろうけどね」


「と、いうと?」


天使「まだ新米の僕にこっちの世界の人間と行動させて理解を深めさせようとしてるんじゃないかな」


「・・・」


「俺は一方的に被害者じゃないか!」


天使「でも元の体に戻るなら協力するしかないよー」


天使「まだ死にたいんなら、ね」


「・・仕方ない」


天使「ん?なんか言った?」


「手伝えばいいんだろっ!」


天使「はいはい、もっと自ら手伝いたい感出して」


「手伝います」


天使「元気がなーいっ」


「はーーーーーー?」


天使「元に戻りたくないんだ」


「手伝わせてくださいっ」


「これでいいんだろ?」


天使「最後のは余計だけど、まぁ良しとしよう」


天使「僕の名前はミサ」


ミサ「よろしくね♡」

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