第37話「とてつもない孤独」だって死んじゃったんだもの…。
5月19日。
あーあ、死んじゃった。
キーボードにむかって思う感想はそれっきり。
我が愛猫「大和(やまと)」は十三歳と八か月をもって、寿命でみまかった。
わたくしのベッドの真ん中で、もうほとんど寝たきりなのに、わたくしが部屋へ入っていくと、姿勢を正そうとする。
思えば不憫だ。
わたくしが「生きろ」と言ったばかりに……苦しい思いをさせてしまった。
謝りたいが謝れない。
もう彼はいないのだから。
可憐なお花、カスミソウで包んで火葬に出した。
昨日のことだ。
今日は二時に彼のお骨を受け取った。
四聖獣のラベルをはがし、開けてみると、真っ白な頭骨に黄色い花粉のようなものがまつわって出てきた。
かなり軽い。
歯ぐらいは残ってくれると思っていたのだが、これがぼろぼろで。
ああ、おまえ。
どんな火力で焼かれたのだ、と惜しむことしきり。
骨の一部を食べちゃおうかとも思った。
軽いが、スナック感覚とはいかず、若干の背徳感もあってやめておいた。
できれば火葬には立ち会って、骨を拾ってやりたかった。
しかし、おまえの大好きだった日陰(おそらく)、最後に身を伸べていたミカンやレモンの樹の下、や、畑に散骨してやるぞ。
うれしかろう?
なあ……?
な……?
☆☆☆
同日。
大和を火葬に出してから、どうも部屋で寝るのが怖くなった。
大和の死骸と寝るのは安心したが、彼のいなくなった部屋で寝るのは不安だ。
☆☆☆
なんにも書く気持ちが起こらないので、時系列順に書いていく。まあ、あらすじのようなものだ。
Am2:00頃、目覚める。
二度寝でam4:45起床。
勉強も済ませてしまう。
部屋の床にダンボールがないだけで、せいせいする。
Am5:45、カーテンを開けると、太陽がまぶしい。いい朝だ。
今日は大和の骨が届く日だ。楽しみだ。どんなになっているだろう。
ソファに寝てると5分が長い。大和がいなくなったと実感。
もうすぐam6:00。右目が、知らずしらずの涙でカピカピになっていた。
Pm2:00、大和の骨が還ってきた。カバーは被せてあるだけだから、下を持ってくださいと言われた。忌日を書かれた書類の入った封筒に、わたくしの名が書かれていた。
少し迷ったが、倉庫にしていた部屋へ持って行く。わたくしの今の部屋は、ノートPCを動かしたりなんだりで、ややこしいから。
四角い骨壺で、蓋の四辺が東西南北、と四聖獣のラベルで封をされていた。
個別葬でよかった。
しかし、歯の一本くらいまともに残っていると思っていたのに、ぼろぼろだ。
一体、どんな火力で焼いたんだ?
一番うえに、頭骨が乗っていて、てっぺんに少しも隙間がない。
ああ、あの子だ。純血種なのに強いはずだ。
食べたれとも思ったけれど、蓋をして、キッチンでソフトサラダを3袋と、マッコリのグレープフルーツジュース割りを一ぱい、湯のみの極、小さいもので飲んだ。
さあ、ゆっくり寝よう。
Pm9:25、日記を書いた。さあ、一日をしめよう。
大和のいない部屋で寝るのは怖い。
とてつもなく、怖い。
そんな気がしただけだろうか?
今は隣家のくしゃみが気になる。なにやら、咳き込んでいる様子だ。
時計を部屋に戻した。
とてつもなく、生真面目で、時間を気にする生活に戻った。
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