第10話「わたくしには真実」
4月17日
今日の午後。
pm1:30頃、父のご友人が亡くなった、納骨が済んだ旨、連絡が入った。知らぬ人ではない。
まだセンサーは健在のようだ。
というのは、わたくしの左目から、まえぶれもなく涙が零れ落ちるとき、必ずと言っていいほど、知人の誰かが亡くなったという知らせが入る。
ここのところ、なにかと言ってはちょびちょびと涙が出る。地震があったから、親戚のだれかかな。嫌なことが起こるな。そう思っていた。
今朝はam9:30頃に朝食を摂ったが、たらこパンを口にしたとたん、左目から涙の粒がぼろっとこぼれて、左頬を濡らした。PCにむかっていてもタラタラタラタラ。ぬぐってもぬぐっても出てくる涙。
なんだろう、こういう時、とても困るのだ。
今日は周りに人がいなかったから良いけれど、大学生の時は困った困った。みんなで昼食摂ってる席で、涙が出てきて不審がられたのでわたくしは「メロンがあまりにもおいしくて……」とごまかしたのだ。
父のご友人というのは沖縄出身で、定年後、沖縄に帰って独り暮らしをしていたらしい。一度招かれてお邪魔したが、水場から寝床、デスクまで全部手作りだった。PCもあった。
沖縄ドーナツのサンダアーギーもごちそうになった。おいしかったなああ……。わたくしはデスク脇の一番手前にあった、鮮やかな写真の載った雑誌について何か言った憶えがある。
彼は3月下旬に倒れたそうである。
わたくしの左目からちょぼちょぼ涙が止まらない変な時期であった。
今日その正体がわかったのである。
気のいい人だった。傲慢なところも、不自然なところもなく、赤い日焼けをした顔で、いつもニコニコしている、そんな感じの人だった。
父と彼は会社の同僚で、彼がアルバイトの時期に体を壊してしまったことから、准医師の資格を持っている父が、針灸で治療してあげていた。一週間に一度は必ず家にきていた。母は必ず、サッポロ一番の味噌ラーメンに具をたっぷり入れて昼食に出してあげていた。運んだのはわたくしだった。
お亡くなりか……それで涙が先に出たのか。なんか、人として順番が違うだろう。とは思うが、涙さえなかったとしたら、わたくしは彼の妹さんなる婦人からの電話に急いで受話器をとったりはしなかった。
あらかじめ知らせてくれるということは、これは虫の知らせに近いのではと思う。わたくしどこかおかしいのかな、そう思うこともある。だけど、世の中にない話ではない。
哀しいことがあるときは左目、うれしいことがあるときは右目から涙が出るという。そういうジンクスじみたものがある。わたくしには真実であったという話だ。
昨日は地震のニュースばかりでショック状態にあったが、右目から涙が出たんだ……親戚が全員無事だったということかなあ、とぼんやり思っていた、その次の朝。今日のことだった。
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