(4)

「これは……」


 健二が連絡を入れてしばらくして部屋に到着した君塚は、件のメールをしかめっ面で眺めていた。


「君塚さん、これ」

「ああ、厄介な事になってきたな。ともかく、これは手掛かりの1つになる。すまないが、理沙さん。一緒に署まで来てもらってもいいかな?」

「え?」

「何、このデータのコピーをとらせてもらうだけだよ。それが終わったらすぐに帰れるから」

「あ、はい……それなら」

「健二君もそれでいいよね?」

「ええ、お願いします」


 そして君塚に連れられ、理沙は部屋を後にした。

 静けさの戻った部屋の中で、急に力が抜けた健二はその場に座り込んだ。

 恐れていた事が起きつつある。拓海が死んだ時点では、まだ自分は無関係だと思い込んでいた。違うのだ。その時点から理沙を巻き込む事まで想定済みだったのだ。そしてここに来て改めて思った。


 ――次は俺かもしれない。


 考えたくもない最悪な結末。

 理沙が殺され、悲しみに暮れる自分の元に突然届くメール。

 画面を開き、そこに現れる宣告分。


“ツギハオマエダ”


 少し前までは真剣に考えながらも、そんな馬鹿なと思っていた未来。

 だがもうそれは、決して大げさではない未来になってきている。

 後もう少しすれば社会に出て働き始める。荒波にもまれながらも奮闘し仕事をこなしていく。そしてその先には理沙との結婚生活がある。今まで通りでありながら、家族という新たな絆で繋がり幸せを育んでいく。そんな未来を想像していた。

 だがその未来が今、断ち切られようとしている。

 健二は思わず両手を絡め、神に祈った。


 ――どうかこれ以上、悲劇が起きないでくれ。

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