雪牙

リフト。

第1話 プロローグ(1)

アスファルトの破片を蹴散らして、1台のトラックが走る。

荷台には大量の荷物が布を被せられロープでぐるぐる巻に固定されていた。

そのトラックのハンドルを握る運転手は肩まである黒髪を後ろで一つに結び、端正な顔は浮かない表情をしていた。十六か十七その位の年齢に見える。鳶色の制服はまだ新しく、腰には小太刀を携えている。

「........嬢ちゃん。折角の可愛い顔で仏頂面してたらもったいねえぞ」

そう言ったのは助手席に座る三十代そこらに見える男性。

無精髭を生やし、口元には煙草を咥えているが火はついていない。

細く引き締まった体に纏う鳶色の制服は所々ほつれていた。

「余計なお世話よ。だいたいなんでおじさんと一緒に荷物運びなのよ!」

「俺としちゃ、お前の親父さんから面倒をみるよう頼まれてるからそれはそれでいいんだけどよ」

「それも余計なお世話なの!」

「じゃあいつも通りに書類整理の方が良かったか?」

「それは....それも嫌!」

「良かったじゃんよ。書類整理よりは任務らしい任務だぜ」

何も応えずむっとしたままハンドルを握る。

廃れた街をトラックが一台駆けていく。

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