幸せってなんだろう。

ゆずこしょう

第1話

 世の中には僕よりも幸福な人間は山ほどいて、それと同じくらいに不幸な人間もいる。だから多くの人は自分より不幸な人を思い、自分より不幸な人が世の中にはいるのだからこんなことでへこたれてはいけないと考える。学生ならば貧しくて教育を受けられない子を思い勉学に励み。明日を生きるお金が無い人を思い疲れた目をして夜遅くの電車に揺られるそんな日々を過ごしているんじゃないかな。

 では、その幸せとは何だろうか。そう問われて多くの人がまず例に出すのは金銭的な格差だろうね。お金持ちの人間は幸せで、貧しい人間は不幸だと、そう言うんだ。

 確かに、お金持ちの人間は何不自由なく物や食べ物を買えるし、仕事だってしなくても良い。反対に貧しい人間というのは明日を生きるのにも精一杯で自由に物や食べ物を買えないし、仕事をしなければ生きてはいけない。

 だけど、ここで言いたいのは、そういった格差は資本主義経済による影響だとか、貧しい人間でも仕事をしないで生きている人間がいるだとか、そういった事じゃない。僕は考えるのだ。本当にそういった事で幸せというのは計れるのだろうかってね。

 これは完全な僕の憶測だから、多くの批判があるのは承知で言うけど。日本人は自分が幸せか不幸かと問われたら多くの人が自分は不幸だと答えるんじゃないかな。それは国民性が大きく関係しているのは勿論だろうけどね。でもここで大事なのは日本人の国民性や地域によるものではなく、なぜ自分が不幸と答えるかだ。

 きっと自分より楽して儲けている人間がいるからだとか、自分は昨日に彼女に振られたからとか、幼い頃からの夢を叶える事が出来なかったからだとか、理由は様々だけど人それぞれ自分が不幸だと思う根拠があるんだろう。逆に自分が幸せだという人間は自分には婚約者がいるからだとか、今の仕事が天職だから、宝くじが当たったとか、他にも色々なそんな理由があるはずだ。

 理由はたくさんあって、それを感じるのは個々によって違う。つまりそれは幸せの形というのは何かで計ることが出来ないものだという事が分かってくる。例に僕を挙げると、友達とファミレスに行き料理を選ぶ間の時間とか、錆びついた商店街を歩いたりとか、好きな音楽を聴きながら夜の街を散歩したりだとか。他人からみればどこが良いのかさっぱりだろうけど、そういった事に僕はとてつもなく幸せを感じるし、人に理不尽に怒られたり、嫌いな食べ物が出てきた時、初恋が叶わなかったとか、ああ自分はなんて不幸な人間なんだと思うんだ。

 こんな風に僕たちの幸、不幸は、今日を生きるのにも苦労してる人たちからすれば馬鹿馬鹿しいと言われるだろう。そんな人たちから見れば僕はとても幸せに見えるのかも知れないが、ここで考えて欲しいのは、幸せの形は千差万別なのにどうして人間には幸せな人と不幸な人間が存在するのだろうかという事だ。先ほど僕は金銭的な格差や地域の違いとはまた違うと言った。だから違う答えをだそう。

 とそんな風に言い切った手前で悪いがこの命題に答えを出すのはそう易々とは出来ない。それも一介の一般人である僕に出せるはずも無い。しかし、そんなちっぽけな僕がいつも思っているのは、幸せが存在するが為に不幸も存在するのだろうという事。反対に不幸があるから幸せもあるんだろうという事だ。

 当たり前の事をいっているのだと言われるかも知れない。いや実際の話、言っている事はさっきから至極ありきたりなんだ。だからついでに普通の事を言ってしまえば、他人の幸せを感じる事で幸せを得られる人間もいるし、他人の不幸で幸せを得られる人間もいる。これも、これまで通り、その逆もあるわけだね。

そう考えると、幸せというのは不幸の上にあるのではなく不幸は幸せの下にあるのではないかと思えてくるんだ。

 幸せの形というのは実に複雑さ。だけどそんな幸せと不幸は、自分の中に確実にある。何が幸せで何が不幸なのかが、区別されていて知っているんだ。

 自ら不幸な人生を送ろうと考える人はそうそういないだろう。明日は今日よりも良い日であるように、今日は幸せだったから明日も頑張ろうと思う。明日になれば好きな監督の映画を見に行く、友達と呑みに行く、好いているあの子に会える。などなど人は人それぞれの幸福を想像し追い求めて生きていくんだ。だから僕からこれから幸福に生きていきたい人にアドバイスを送るなら、自分の幸せの幅を増やす事なんじゃないかな。どんなに小さい事でも幸せを求められれば、少しはこの世界も生きやすくなると思うよ。もちろん、他人の不幸を自分の幸福とするのは良い事とは言えないから、そういう方向に幅を増やす人間にはならないでもらいたいけどね。

 君も空を見上げながら考えてみるといいよ。自分は幸せなのか不幸なのか、そもそも自分の語る幸せってなんだろうってね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幸せってなんだろう。 ゆずこしょう @si-na_natsu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る