幸福なような社会、幸福であるはずの家族、幸福なボク
九日宮
第1話
今は戦時中でありながら平和だ。
だからこそ死んでいく人間の数が単純に二倍になっているのだろう。
ブースから出た僕はそんなことを考える。
共同体の一員の義務として16を迎えた少年は日に二時間ブースに入り、ドローンに意識を載せて、GODを信じるものの上に雨を降らせる。そうして一日の務めを終えると日常の平穏の中で生きるために教科書を開いたり、デスクワークに勤しむのだ。
死ぬことが許されるその日まで。
「なあ、リンリ、今日の食堂の日替わりおっそろしいハズレらしいぞ。」
僕より五分ほど先にお勤めを終えていたアオイが電子タバコをふかしながらそう教えてくれた。
「貧乏学生で下っ端の僕らには関係の無いことじゃないか。それしか選択肢が無いんだから。」
「ちがいねぇや。それでもメシは美味いにこしたことはねぇ、そうだろ?」
確かにどの通りだった。ぐうの音もでないほどの正論で、そのうえ僕の腹は鳴っていた。
「メシに行こうぜ。」
そう言って電子タバコのリキッドをダストシュートに投げ込んだアオイと連れ立って僕は食堂へと向かった。
幸福なような社会、幸福であるはずの家族、幸福なボク 九日宮 @kokonokakyu
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